常圧蒸留装置
常圧蒸留装置とは、原油に含まれる様々な物質を分離させるための装置。原油を大気圧より少し高い圧力で蒸留することで、それぞれが異なる沸点を持つ留分(蒸留することにより、沸点別に蒸発分離して得られる各成分のこと))に分離させる。
常圧蒸留装置は「トッパー」「トッピング装置」「原油蒸留装置」ともいわれる。灯油や軽油には添加物が加えられ、そのまま製品化されることが多いが、ガソリンなどは更に処理や調整が加えられる。
■常圧蒸留装置の構成
常圧蒸留装置の主な構成は、主蒸留塔と原油加熱炉、脱塩装置、スタビライザーである。それぞれの説明は以下の通り。
・主蒸留塔
主蒸留塔は、常圧蒸留装置の中心となる装置である。50mほどの巨大な円柱状をしており、蒸留によって原油を「オフガス」「LPG」「ナフサ」「灯油」「軽油」「重油」などに分離する。
・原油加熱炉
原油加熱炉は、原油を加熱する装置である。主蒸留塔には加熱装置がついていないため、原油は別に設置された原油加熱炉で350度ほどに熱されてから、主蒸留塔に送られる。
・脱塩装置
脱塩装置は、原油に含まれる水分・塩分・鉄分・泥などの不純物を取り除くための装置である。高電圧をかけられるように電極を取り付けた脱塩槽(デソルター)が加熱炉の上流に取り付けられている。
脱塩槽に流れ込む前の原油に少量の水を加えることで原油内の不純物と水を混ぜ合わせ、その後は脱塩槽内に流れ込んだ原油に電圧をかける。静電作用によって、不純物が溶け込んだ水のみを分離させることができるという仕組みである。
・スタビライザー
スタビライザーは、蒸留されることで原油から分離したナフサ(ガソリン原料や、石油化学の原料になる)とLPG(燃料や石油化学原料に用いられる)の混合物を、さらに分離するための蒸留塔である。
■常圧蒸留装置によって精製される各成分
沸点の低い順に、以下の6種類の成分が精製される。
・オフガス
主にメタンとエタンから構成されている。工場内の燃料になる。
・LPG
プロパンとブタンから構成されている。燃料や、石油化学原料として使用される。
・ナフサ
沸点が35度~180度の炭素水素で出来ており、ガソリンの原料や石油化学の原料として使用される。
・灯油
沸点が170度~250度の炭素水素で出来ており、常圧蒸留装置にて蒸留した後、水素化脱硫(水素を用いた石油精製方法)を行うことで使用できるようになる。灯油やジェット燃料として使用される。
・軽油
沸点が240度~350度の炭化水素でできており、常圧蒸留装置にて蒸留した後、水素化脱硫(水素を用いた石油精製方法)を行うことで使用できるようになる。燃料として使用される。
・重油(常圧残油)
沸点が350度以上の炭化水素でできている。常圧蒸留装置で重油ができた後、減圧蒸留装置を用いることで、重油を更に重油・減圧軽油・減圧残油の3種類に分離させてから使用するのが一般的である。