インフラや公共施設の運営で稼ぐ?~拡大するPPP/PFI市場~
2016年07月13日
効率的なインフラ整備を行うために、民間の資金や創意工夫を取り込む事業手法が拡大しています。
インフラ整備の目的
インフラ整備の目的には、公共投資自体によって生産、雇用、消費等の経済活動が創出されるフロー効果と、整備されたインフラが機能することによる「安全・安心」、「生活の質の向上」、「生産性向上」などのストック効果があります(図表-1)。
出典:国土交通省「平成27年 国土交通白書」
このように重要な役割を持つインフラ整備ですが、現在、従来のようにすべてを公共で行うことは、資金調達や施設・設備の運営などの面で課題があります。そこで、官民のリスク分担を明確にしつつ、民間の経営センスを公共施設に取り込む事業運営手法が拡大しています。
PPP/PFIとは
PPP(Public Private Partnership)とは、公共サービスの提供に民間が参画する手法を幅広くとらえたものです。民間の関与の仕方によっていくつかの分類があります(図表-2)。
出典:国土交通省「平成27年 国土交通白書」
代表的な官民連携の手法であるPFIは、事業に関わる資金調達を民間が行うものです。1999 年7 月に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI 法)」が制定され、その後、PFI の事業数、事業費が年々増加しています。2014年度の事業数は489件、事業金額は4兆5,015 億円にのぼり、特に地方公共団体の事業件数が大きく伸びています(図表-3)。
出典:国土交通省「平成27年 国土交通白書」
PPP/PFIの形態
これまでのPFI事業では、庁舎や公営住宅等が中心で、民間が整備した公共施設等の費用や維持管理・運営費用等を公的主体が対価として支払うサービス購入型が大半でした。
これ以外に、施設の利用料収入のみで資金を回収する独立採算型やサービス購入料と施設利用料の両方から資金を回収する混合型があります。独立採算型は、運営リスクを民間が負担する一方で、民間による利用料金の設定やサービス内容の決定が行われるため、創意工夫の余地が大きいという特徴があります。
コンセッション方式の事例
2011 年のPFI 法の改正により、新たにコンセッション方式が導入されました。これは、施設の所有権を公的主体が有したまま、民間が施設の運営権を持つ方式です。
施設利用者からの料金収入にて資金回収を行う独立採算型でありながら、公的主体が所有権を有することで、一定の公共性を保ちます。安定的で自由度の高い運営を可能とし、利用者ニーズを反映した質の高いサービスを提供することができます。主に、空港、下水道、有料道路で導入が進められています。
(1)仙台空港
国が管理する仙台空港は、2015年12月に東急前田豊通グループが設立した仙台国際空港(株)に、当初30 年、最長65 年の運営権が設定されました。
地域や周辺施設と空港が一体となった運営を行うことで、東北地方の活性化を目指しています。同社の事業提案では、国際線の拡充、エアラインの就航意欲を喚起する料金体系の導入による就航路線の拡大、東北ブランドの積極的な発信による航空需要の拡大などが計画されています。東北各地への経済効果の波及が期待されています。
(2)愛知県有料道路
28年6月、愛知県が有料道路運営権を民間に任せるコンセッション方式で、前田建設工業グループが優先交渉権を獲得しました。
パーキングエリアの隣に商業施設を設けることやインターチェンジの増設などが検討されています。利用者が増えれば、料金を下げることも可能になり、さらなる利用者の拡大につながります。サービス改善と利用者拡大が期待されています。
このように公共の資金調達や運営という課題を解決しつつ、インフラや公共施設の運営で地位に貢献し、しかも稼ぐという民間企業のビジネスチャンスが広がっているのです。