公共工事の支払制度~中小建設会社の資金繰りを助ける中間前払金制度~
2017年09月28日
前払金とは、工事代金の一定割合を前払いするものです。これにより、建設会社は資材購入や労働者の確保のための資金を確保することができます。
公共工事の支払制度
公共工事において、従来から一般的に行われている支払方式は、工事着手時に請負額の4割を限度として前払金が支払われ、工事完成時に残りの6割が支払われるものでした。
しかし、これでは工事の途中段階で、出来高に比べて建設会社の受け取る工事代金が少ない時期が続き、中小建設会社にとっては資材費や外注費の支払いのために資金繰りの厳しい時期が続くことがありました。
中間前払金制度
そこで、昭和47年から国において中間前払金制度が導入されました。中間前払金とは、当初の前払金に加えて、工期半ばで請負代金額の2割を追加で払うことです(図表-1)。
出典:「前払金保証事業」(国土交通省)
そして、平成11年に地方自治法施行令が改正され、地方公共団体発注工事においても中間金の前払いができるようになりました。
工期が150日以上の工事であれば、次の要件を満たしている場合に、中間期の前払請求をすることができます。 ①当初の前払金が支出されていること ②工期の2分の1を経過していること ③工期の2分の1を経過するまでに実施すべき作業が行われていること ④工事の進捗出来高が請負金額の2分の1以上に達していることです。
前払金制度の効果
前払金の支払いにより、受注者は、資金を確保することができるため、資金調達の金利負担を軽減して資金繰りを改善することができます。さらに、労働者、下請企業等への早期の支払もすることができます。
一方、発注者も、施工に必要な資金を前払いすることにより、適正な施工が確保されます。
中間前払金制度は、平成29年4月1日現在、国土交通省関東地方整備局管内では、都県では既に導入済みであり、市区町村では420団体のうち296団体が導入しています。
前払金保証
前払金には、上記のようなメリットがありますが、発注者には、リスクもあります。もし前払金の支払い後に、請負者が倒産したり行方不明になり、工事の出来高が前払金の額に達していなければ、発注者は差額の損害を受けることになるからです。この損害を填補するのが公共工事前払金保証事業です。
公共工事を受注した建設会社が工事を続行できなくなった場合に、発注者が支出した前払金の損失を前払金保証事業会社が保証します(図表-2)。建設会社が中間前払金を受ける場合は、前払金保証事業会社との保証契約が必要です。
前払金保証事業会社には、西日本建設業保証(株)、東日本建設業保証(株)、北海道建設業信用保証(株)の3社があります。
出典:「前払金保証事業」(国土交通省)
用語解説
●部分払い
中間前金払いの他に出来高に応じた部分払い方式もあり、請負者が契約時にどちらかを選択することができます。部分払いは、支払回数が増えるため、請負者は、さらに立替金額と期間を少なくすることができます。ただし、対象は、工期が180日を超える工事となり、部分払い時に出来高の検査が行われます。部分払を請求できる回数は3ヶ月に1回程度です。