建設技術者のための読書ノウハウ【Vol.3】建設技術者ならこれを読もう

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(14)建設技術者のための読書ノウハウ【Vol.3】建設技術者ならこれを読もう

160721_pixta_20662786_M_R本を読むことの大切さはわかっているけれど、どんな書籍を読めば良いのだろう、と言う方も多いことだろう。自分に合っていない書籍を読もうとするといやになって、本嫌いになってしまうこともある。

 

今回は建設技術者がどんな書籍を読めばよいかを解説しよう。
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登場人物
地場建設会社 昭平建設
青木建一 現場担当 25歳
今野真一 係長 30歳
武上幸一郎 工事課長 40歳
岩下厳五郎 工事部長 50歳
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技術を習得するための本

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青木;本を読むことの重要性はよくわかりました。ところで具体的にどのような本を読めば良いのでしょうか。

 

岩下;まずは現場で直接役立つ技術書や技術雑誌を読むことが必要だ。品質、原価、工程、安全、環境に関する知識を得るために、書店の専門書コーナーの「建設、土木、建築」棚に行くと良い。
青木;雑誌でもよいですか。
岩下;書籍は体系化された情報を得るためには効果的だ。一方最新情報は専門雑誌から得るのが良いだろう。

 

武上;「日経コンストラクション」「日経アーキテクチャ-」「日経ホームビルダー」(いずれも日経BP社)、「電気と工事」(オーム社)、「基礎工」(総合土木研究所)などは幅広い最新知識を得ることができる。また建設に強い出版社の「鹿島出版会」「大成出版社」から出ている書籍は深く掘りさげて建設技術を学ぶためには最適だ。

建設の歴史を学ぶための本

岩下;建設業の歴史を知ることも大切だぞ。
青木;はい、先輩方が築かれた歴史があってこそ、今の日本があるのですね。

 

岩下;まずは「黒部の太陽」木本正次著(信濃毎日新聞社)を読んで欲しい。高度成長時代に電力不足となった。とりわけそれが深刻だった関西地方の電力を供給するために黒部ダムを作り発電所を造ることになったんだ。しかしそのためのトンネル工事が破砕帯にぶち当たってしまう。苦労に苦労を重ねてトンネルを掘り上げるという物語だ。

 

青木;映画は観ましたが本は読んでいないので、早速読もうと思います。
岩下;その他にも、やはり同じ黒部峡谷に隧道を掘る物語である「高熱隧道」吉村昭著(新潮社) 、北アルプス剱岳に測量三角点を設置する「剱岳 点の記」新田次郎著(文藝春秋)、ダムや高速道路を造る「無名碑」新田次郎(講談社文庫)などがある。いずれも名作なので、ぜひとも読んだ欲しい本だ。

難解なことでもストーリーで学べる

160721_pixta_20086689_M_R岩上;難しいことでもストーリー仕立てになっていると読みやすいぞ。例えば、マネジメントやマーケティングなど、技術者にとっても耳慣れないことでも、わかりやすい本を読むとスッと頭に入るものだ。
青木;どんな本がよいですか。

 

武上;マネジメントを学ぶのであれば「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」岩崎 夏海著(ダイヤモンド社)がいい。
青木;すごく長い題名ですね。でも女子マネージャーというところに惹かれます。
武上;女子マネージャーのみなみちゃんが弱い野球部をマネジメントの力で強くするという物語だ。顧客志向、マーケティング、組織のやる気の上げ方、イノベーションなどを理解することができるぞ。

 

岩下;マーケティングをさらに本格的に学ぶのなら「売れる会社のすごい仕組み 明日から使えるマーケティング戦略」佐藤 義典著(青春出版社)がよい。建設業ではないけれど、業績不振のレストランを建て直す物語だ。マーケティングの知識を活かして一つずつステップを踏みながら進めると、業績向上していく様子が手に取るようにわかるぞ。建設業の顧客開拓にも活用できる内容だ。

人間力を習得するための本

岩下;技術力と共に人間力を身につけるための書籍を読まなければならないな。
青木;人間力って何ですか。

 

岩下;他人へ思いやること、困難に遭ってもあきらめずにやり続けること、相手との約束を守ること、相手への感謝の気持ちを持ち続けること、学び続けること、他人を敬うことなどを実践する力を人間力という。人はすぐに楽な方に行きがちなので、常に書物を通して人としてあるべき姿を読んで、体にしみこませる必要があるぞ。特に建設技術者は多くの人の応援を得る必要があるので人間力を高めることは欠かせない。

 

武上;まず古典的な名著として「人を動かす」D・カーネギー (著) 創元社、がある。現場で人を動かしながら施工管理する人には必読の書だ。人間学の入門書としては「小さな人生論」藤尾 秀昭著(致知出版社)がよいだろう。短いコラムをまとめてあり実例が多いので実践的だ。またビジネスに活かすための人間学を学ぶ書籍としては「生き方」稲盛 和夫著(サンマーク出版)がよい。著者は京セラ、KDDIを創業し、日本航空を再建した経営者だ。組織をまとめるための心構えを知ることができる。

 

青木;たくさん教えていただきありがとうございます。1冊ずつ読んでいきます。
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日々工事運営に追われているとなかなか書籍を読む時間を確保できないかもしれない。しかし、一流の建設技術者になるためには読書の習慣は欠かせない。

 

毎日たとえ1ページでもよいので、自分にあう書籍を選び、書籍をひらく習慣を身につけたいものだ。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。