(11)技術営業の進め方【vol.1】技術営業の5段階
技術者が持ち前の技術力を活かして営業活動をすることを技術営業という。お客様にとっては、技術を良く知っている人の説明を聞くと、安心してその会社に工事を発注しやすくなる。
しかし技術者は必ずしも営業が得意とはいえないものだ。
今回は、技術者が営業をする際の5つの留意点を解説しよう。
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登場人物:
地場建設会社 昭平建設
・青木 建一 現場担当 25歳
・今野 真一 係長 30歳
・武上 幸一郎 工事課長 40歳
・岩下 厳五郎 工事部長 50歳
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第1段階 相手に近づけ~親密力
岩下;これからの施工管理技術者は、技術力だけでなく、技術営業力が必要だぞ。
青木;技術営業ってなんですか。
武上;技術力を活かしてお客様に営業することで、新規受注や、追加受注を有利にするものだ。
青木;技術営業力を高めるにはどうすればよいのですか。
武上;技術営業力を高めるためには5段階のポイントがある。
まず親密力が必要だ。相手と親密になることで距離を縮めるとよい。
今野;工事現場では、お客様と初めて出会う場合が多いので、親密になることは大切ですね。
武上;親密力とは、料理で言うと潤滑油のようなものだ。素材が焦げ付かないように相互の関係を滑らかにすることでおいしい食事を調理することができるよ。
第2段階 話をよく聴け~調査力
武上;技術営業力の第2段階は調査力だ。お客様の話をよく聴いてどんなご要望があるかを漏らさず調査することが重要だ。
今野;お客様によっては無口な方もいらっしゃいますね。
武上;そうだな。そんな場合でもうまく質問をして聴き取らなければならない。
青木;とってもよく話すけれど、何をいっているのかよくわからないお客様もいらっしゃいます。
武上;そんな場合は、話を誘導しながらこちらで整理してあげないといけないね。
第3段階 魅力的な企画書を作れ~文章表現力
武上;技術営業力の第3段階は文章表現力だ。お客様から聞いた要望をまとめ、提案書、企画書、見積書、図面などの形で表現すること能力のことだ。
青木;僕はいろんなアイデアは浮かぶのですが、それを文章や図面にわかりやすく表現するのが苦手です。
今野;提案書などは一人歩きすることがあるので、誰が見ても内容がわかるように作成しなければならないね。
第4段階 心に響く話をせよ~表現力
武上;技術営業力の第4段階はお客様に提案書を説明する際の表現力だ。プレゼンテーションともいう。
青木;僕は話すのは得意です。なにせ学生時代は落語研究会でしたから。
今野;えっ、青木君落語やっていたの。一席聞かせてもらいたいね。
武上;ここでいう表現力は、落語と同じで、提案書の内容をただ伝えるだけでなく、聞き手の心を動かすように伝えないといけない。
「あなたから買いたい」と思わせるようなプレゼンテーションをしたいものだ。
第5段階 交渉で勝つ~交渉力
武上;技術営業力の第5段階は交渉力だ。
いくらお客様の心を動かすプレゼンテーションをしたとしても、競合相手がいたら比較され、提案書の見直しや値引きを要求されることもある。そんなときでも、うまく交渉をしてまとめあげる力が必要だ。
今野;僕は強引に押しすぎてお客様に引かれてしまうことがあります。
青木;僕は逆に遠慮しすぎてお客様のいうことをすべて受け入れてしまい、あとで困ることが多いです。
武上;交渉とは強すぎても弱すぎてもよくない。ちょうどよい頃合いを見つける能力が必要だ。
そして大切なことはお客様、自社相互にとって有利になるような形でまとめることだ。
岩下;今野君、青木君、君たちはこの5段階のうち、得意なこと、苦手なことは何だい。
今野;僕は、調査力、文章表現力、交渉力は得意なのですが、親密力、表現力が苦手です。
青木;僕は、今野さんとまったく逆です。親密力、表現力は得意ですが、調査力、文章表現力、交渉力が苦手です。
岩下;大切なことは自分が苦手なことを知り、それを高める努力をすること、またはその分野が得意な人の力を借りることだ。
そういう意味では、今野君と青木君はお互い得手不得手がずれているので、お互い助け合うことが重要だな。
青木;今野さん、よろしくお願いします。
今野;こちらこそ、よろしく。
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技術営業をする際の5段階(親密力、調査力、文章表現力、表現力、交渉力)のうち、自分がどの段階が得意でどの段階が不得意かを知ることは重要だ。
組織全体としての得手、不得手があることもある。
しっかり現状分析して、不得手な項目を克服することに注力したい。
降籏 達生 ふるはた たつお
建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。