今すぐできる工期短縮【vol.1】どうすればハンバーグを早く作れるのか?

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(6)今すぐできる工期短縮【vol.1】どうすればハンバーグを早く作れるのか?

電話で話す技術者工期短縮にも原価低減と同様に5つのポイントがある。
これらを着実に実践することで必ず工期を短縮することができる。
今回はポイント1「旗を立てよ」、ポイント2「行き方を変えよ」で工期短縮手法を考えてみよう。

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登場人物:
地場建設会社 昭平建設
・青木 建一 現場担当 25歳
・今野 真一 係長 30歳
・武上 幸一郎 工事課長 40歳
・岩下 厳五郎 工事部長 50歳
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来た道を振り返れ

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岩下「原価低減に続いて、工期短縮の方法を考えてみようか」

 

武上「原価低減と同様に、5つのポイントがあります。「旗を立てよ」「行き方を変えよ」「ムダを省け」「マイルストーンで改善せよ」「来た道を振り返れ」です」

 

今野「やはり山登りと例えるとわかりやすいですね。頂上に旗ならぬ工期目標を立てる。山の登り方ならぬ工法を工夫する。ムダをなくして効率的に工事を進める。途中で中間チェックをして進捗を確認する。そして登り終わったらしっかり反省する。ですね」
武上「そうだ、よく理解しているな」

 

青木「まずは「旗を立てよ」ですね。工期において旗とは工程表のことですね。私は、バーチャート工程表はよくわかるのですが、ネットワーク工程表がよく分りません」
今野「一般に現場ではバーチャート工程表がよく使われているね。しかし、工期短縮の方法を考えるときには、ネットワーク工程表でないとうまく検討できないよ。せめて工期短縮を検討する部分だけでもネットワーク工程表を作りたいね」
青木「ネットワーク工程表を作るメリットって何ですか。私は面倒くさいだけでメリットを感じないのですが」

 

今野「ネットワーク工程表を使うメリットは、クリティカルパスがすぐにわかることだよ」
青木「クリティカルパスってなんですか」
今野「そのまま日本語にすると『重大な工程』だ。工事を進めるうえで、ネックとなる工程を指すんだ。工事の全体工程を左右する作業だ。クリティカルパスの作業が遅れると、工事の全体工程が遅れることになる。このため、クリティカルパスの作業を円滑に進行させることが工程管理するうえで重要となっている。工事を遅らせないためにクリティカルパスの作業をいかに効率的に進めるかをあらかじめ考えておくこと、そしてその作業をいかにして短縮できるかを考えることが重要だよ」

 

料理する手元青木「ちょっとまだよくわからないのですが」
今野「例えば、料理を作ることを考えよう。献立はハンバーグ、ごはんと味噌汁だ」
青木「僕、ハンバーグ大好物です」
今野「ごはんは、お米を洗い(3分)その後炊飯器を使って20分でできる。ハンバーグは、タマネギをみじん切り(5分)にしてミンチと練り合わせ(5分)、形を整えて焼く(5分)で合計15分。味噌汁は、煮干しとかつお節でダシをとり(10分)、タマネギを刻み(5分)とジャガイモを入れて煮込み(10分)、その後味噌を入れて温めると(5分)、合計30分できあがりだ。」
青木「タマネギが多いですね」
今野「タマネギが好きなんだ。ところで青木君ならどういう順序で作る?」

 

青木「僕は料理が得意でないので、ごはん20分、ハンバーグ15分、味噌汁30分、一つひとつの料理を順に仕上げることでしか作れません。合計65分かかりますね。」
今野「そのうち何がもっとも重大な工程だと思う?」
青木「やはりおかずのハンバーグでしょうか」
今野「では同時進行で料理を進めるとしよう。まずご飯を洗い、炊飯器のスイッチを入れる。その後、煮干しとかつお節でダシを作りながら、ハンバーグに入れるタマネギと味噌汁のタマネギを同時に刻む。味噌汁にタマネギとジャガイモを入れた後、ミンチとタマネギを練りハンバーグを整形する。味噌汁の味噌を入れ温めながら、ハンバーグを焼くとできあがりだ。ちょうどごはんも炊きあがっているころだろう」

 

青木「すごい同時作業ですね」
今野「お米洗い3分→タマネギ刻み5分(その間ダシをとる)→味噌汁煮込み10分(その間ハンバーグ練る)→味噌の投入温め5分(その間ハンバーグ焼く) で合計25分で完成だよ。このとき、お米洗う、タマネギ刻み、味噌汁煮込み、味噌の投入温めが重要な工程、いわゆるクリティカルパスで、これが遅れると全体の時間がずれてしまう。逆にハンバーグを練ったり焼いたりするのは、少々余裕があるね。またこのクリティカルパスを短くすることができると全体の料理時間も短くできるよ」
青木「例えばお米洗い、タマネギ刻みを短い時間でできるようになれば、全体の料理時間が短くなるということですね」

 

今野「ネットワーク工程表を作ると、クリティカルパスがすぐに分るようになるんだ」
青木「僕も勉強してネットワーク工程表を使いこなしたくなりました。ついでにハンバーグも食べたくなりました」
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行き方を変えよ

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ビル建設現場武上「では次にこれまでとは異なる方法で施工することで、工程を短くする方法を考えてみよう。今野君、工程を短くするための施工方法のコツを5つ話してくれないか」

 

今野「まずは「人数を増やす」と「一日の作業時間を長くする」です。単純なことですがこうすると確実に工期を短縮できます。また「機械・設備を大型にする」と一度に掘削したり、敷均したり、運搬したりする数量が増え、工期を短縮できます。」
武上「確かに工期は短くなるけれど、無理に人を集めたり、残業をさせたり、大型機械を使用すると予算アップの原因になるぞ」

 

今野「「同時並行作業をする」という方法もあります。通常は順番に行う作業を同時におこなうものです。例えば、通常のビル工事は地下部分を作ってから1階以上の部分を構築しますが、地下と1階以上を同時に施工する方法があります」
武上「それは逆打ち工法といって、工期短縮には効果的だな」

 

今野「「作業場所を変える」方法もあります。例えば、通常は工事現場でコンクリートを打設するところを、生コンクリート工場でコンクリート打設し固まった後、工事現場に運搬し据え付けるという方法です」
武上「プレキャスト工法だね。U字溝、マンホールやビルの床スラブや柱でも使用されることがある。この場合は、工期短縮と同時に予算低減も可能だね」
青木「いろんな工期短縮手法があるのですね。勉強になりました」
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工期を短縮するために、ネットワーク工程表を作成して、クリティカルパスを把握し、ピンポイントで工期短縮策を考えることは重要だ。
また「人数を増やす」「一日の作業時間を長くする」「機械・設備を大型にする」「同時並行作業をする」「作業場所を変える」ことで工期を短くすることができる。
工事案件ごとに適切な方法を選択して実行できるようにしていこう。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。