今すぐできる工期短縮【vol.2】「サバを読まれたらどうすればいいのか?」

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(6)今すぐできる工期短縮【vol.2】「サバを読まれたらどうすればいいのか?」

青空背景のサラリーマン建設業は自然相手なので、天候不順、地盤が想定より硬いなど、思わぬことが生じることがある。そのため正確な工期を把握することが難しい。
そんな時には「ギリギリ工程」を把握することが大切だ。

 

今回はギリギリ工程を把握することで工期を短縮する手法を考えてみよう。

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登場人物:
地場建設会社 昭平建設
・青木 建一 現場担当 25歳
・今野 真一 係長 30歳
・武上 幸一郎 工事課長 40歳
・岩下 厳五郎 工事部長 50歳
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できるかできないかフィフティ・フィフティ

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武上「工程表のなかの、個別工種の施工期間を決めるときに注意すべきことは何だと思う?」
今野「総数量を、1日で施工できる数量で割ればいいのですね。例えば、基礎杭の総数量が50本で、1日5本打つことができるとすれば、50本÷5本=10日間と計算します。それに準備、片付け期間を追加して算出します」

 

武上「1日に施工できる数量はどのようにして判断するんだい」
今野「協力会社の担当者に聞いたり、過去の施工実績、標準積算基準などを参考にして決めます」
武上「協力会社の担当者に聞いたら『1日5本打つことができます』と言ったとしよう。それはおそらくサバを読んだ数字だぞ」

 

今野「サバを読む?」
武上「本当は1日7本打つことができるけれど、現場の地盤が固かったり、雨の日が続いたりすることも考えられる。そこで余裕を見て話しているんだ
青木「そういえばそうですね。私も今野さんに『この図面書くのに何日かかる』と聞かれたとき、本当は3日でできそうでも、5日かかりますとサバを読みますね」
今野「青木くん、サバを読んでいたのか」

 

武上「施工管理技術者は、その工程にどれくらいの余裕が含まれているかを把握していないといけない。そのためには、できるかできないかフィフティフィフティ(50:50)のギリギリ工程を理解している必要があるぞ」
青木「ギリギリ工程って何ですか」
武上「順調にいけばできるけれど、ちょっとトラブルがあると守れない。守れる確率が50%、守れない確率が50%の工程だ」
青木「浅田真央さんがハーフハーフって言ってたやつですね」

 

今野「ギリギリ工程を把握したうえで、何日かの余裕をつけて工程を組めば良いのですね」
武上「そうだ。工種ごとで余裕日数が異なっていると全体工程を調整することができなくなる。すべての工種のギリギリ工程と余裕日数を知っていると、何かトラブルがあったときに対応が早くなるんだ。しかもギリギリ工程を厳しく要求すると、作業者はその工程でムダなく終わらせるためにはなにをすればよいかを必死になって考えるので、効率的に仕事をすることができるぞ」
今野「しかし、協力業者の人たちはなかなか手の内を見せたがりません。つまりギリギリ工程や余裕日数を知られたくないのです。どうすればギリギリ工程を知ることができるのでしょうか」
武上「例えば次のようなやりとりをするといいぞ」

 

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ギリギリ工程を知る方法

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電卓と、考える男性リーダー「10日かかるって?ちょっと長すぎるな。俺なら5日くらいでできると思うけど、どう?やってみない?」
担当「ちょっと待ってください。10日でも十分厳しいし、5日なんてとんでもない。掘削中に水がでるかもしれないし、雨も考えられます。おまけに、工事の最中に必ずといってよいほど、社長や工事部長から突然、別の現場に行けっていう指示が来て、いつも「大至急だ」っていわれますよ」

 

リーダー「そうだな。5日は厳しいかもな。でも、もしも水も出ず、雨も降らず、社長、工事部長からの突然の指示もなくその作業だけに集中できたらどうだ?」
担当「そんなことは現実的じゃないけど、それなら2日くらいは詰めて、8日でできるかもしれません。」
リーダー「8日ね。では、例えばの話だが、工程に対してその50%の保険で守られるのならどうだろう。」

 

担当「保険ってなんですか?」
リーダー「その分遅れてもおとがめなしということだ。8日工程の場合、保険はその半分の4日つける。すると全体で12日で終わればいい工期となる。」

 

担当「10日の工程を8日にチャレンジするが、4日の保険があり、合計12日でやるっていうことですか?それなら問題なくできます。」
リーダー「10日工期に対して12日なら誰でもできるね?もっとつめられないか?」
担当「じゃあ・・・・・・、7日ではどうですか?」
リーダー「7日ってことは、保険は半分の3.5日だ。全部の工期は10.5日になる。するとチャレンジ7日、保険3.5日の工程となる。まだ10.5日で元の工期より多いな。じゃあたとえば5日間、この仕事だけに集中してくれないか。ほかは一切手をつけないで、段取りも俺が教える。実際に問題があったら、本当に保険の2.5日までは俺が面倒見るよ」

 

担当「本当に面倒を見てくれるんですね。なら5日でチャレンジしてみます。これなら、合計で7.5日までは遅れてもおとがめなしですね?」
リーダー「その通り。5日のチャレンジの工期、2.5日の保険で今回の工事はやってみよう。」

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できるかできないかフィフティフィフティ50:50のギリギリ工程を把握し、現場に要求することのメリットは2つある。

 

・1つ目は現場がギリギリ工程内で施工できるようムダを省くよう自ら工夫すること。
・2つ目はリーダーが全体工期とギリギリ工程との差の余裕日数を把握できるので、工期が遅れたときの対応を迅速にすることができることだ。

 

リーダーは現場のムダを省くためにも常にギリギリ工程を意識することが大切だ。

 

【参考文献】目標突破する実践プロジェクトマネジメント(中経出版)

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。