建物を支える地盤と基礎~マンションの傾き問題から~
2016年01月22日
横浜市の大型マンションの傾きでは、杭打ち工事のデータ改ざんが大きな問題になっています。
マンションの傾きの原因
大きなマンションは重量が大きいため、弱い地盤だと建物が沈んだり傾いたりします。
そこで、強い地盤に建てるか、弱い地盤の場合は、地中深くにある支持層まで杭を打って建物を支えます。どの地盤を支持層とするかは、建物の大きさや重さ、構造、地盤の種類などを考慮して設計者が決めます。
今回のマンションの傾きでは、建物を支える杭のうち何本かが想定した支持層に届いていなかったことが疑われており、元請けの三井住友建設と杭工事を行った旭化成建材による調査が行われています。
ただし、杭以外の原因も考えられるため、詳細な調査が必要となっています。
建築前の地盤調査
建物を建てる前には、地盤調査を行って地盤が強いか弱いかを調べます。
マンションなどの大型建築物の場合は、地盤調査としてボーリング調査が行われます。
これは、地面に穴を開けて掘り進み、一定の深さごとに土を採取し地層の深さ、地層の構成や地層の強度を調べる方法です。
地層の強度は、標準貫入試験によって調べます。
1m掘り進むごとに重さ63.5kgの重りを76cmの高さから落として、深度30cm貫入するのに要した重りの打撃回数(N値)を記録します。
地層が堅いほど打撃回数が多くなります。
一般の高層マンションでは、N値50以上、中低層では30以上が5m以上続くことが支持層の目安となります。
ボーリング調査は費用が高いため、戸建住宅の地盤調査では、スウェーデン式サウンディング試験が用いられます。
建物を支える基礎の種類
基礎の種類には直接基礎と杭基礎があります。
直接基礎は、建物の重さを鉄筋コンクリートの底盤で直接地盤に伝える形の基礎です。
堅い地盤が地表近くにある場合に用いられる形式です。
サンシャイン60や京王プラザホテルなどは高層ビルですが直接基礎で建てられています。
杭基礎は、建物の重さを杭によって地盤に伝える形式です。
杭には、支持杭と摩擦杭があります。
支持杭は、杭の先端を支持層に到達させて建物を支えます。
摩擦杭は、杭表面と地盤との摩擦力によって建物を支えます。地震などによって杭が傾くこともあり、比較的軽量な建物の場合に用いられます。
地盤の種類
地盤はいろいろな地層が重なって形成されています。
一般的な地盤は、上から順番に表土、表層地盤(ローム層)、砂れき、沖積層、洪積層となっています。
沖積層は、河川などで運ばれた腐植土や泥土が堆積して出来た層で一般に軟弱です。
洪積層は、約2~200万年前に作られた古い地層です。岩盤や砂れきで構成され、建物の基礎を支持する良好な地盤です。
これらの地層は地中で平行に堆積しているのではなく、上下にうねっていたり、場所によって厚さを変えて堆積しています。
そのため、支持層が浅い位置にあったり、深い位置にあったりするのです。
これが敷地の中で何箇所も地盤調査を行う理由でもあります。
建物を支える地盤と基礎の重要性
建物自体をどんなに頑丈に建てても地盤が弱かったり、基礎が適切でなければ、安定した建物とはなりません。
地盤調査と基礎形式の選定、施工は建設工事の重要なポイントです。
【用語解説】
スウェーデン式サウンディング試験
先端にねじ状のスクリューポイントの付いた棒を地面に垂直に突き立てます。
ハンドルを回転させて先端のスクリューポイントを地盤に貫入させ、25cm貫入させるのにハンドルを何回転させたかを記録します。
貫入に必要な回転数で地盤の強さを判定します。