地域を不安にする「空き家の増加」
2015年05月15日
急増する空き家
2013年の空き家総数は820万戸で、総住宅数に占める空き家の割合は13.5%にも達しています(図表-1)。
出典:総務省統計局「住宅・土地統計調査」
種類別では、別荘や賃貸用が501万戸、戸建等の居住用住宅が約4割の318万戸となっています。
空き家の問題点
居住者がいなくても管理が適切に行われていれば、周辺への悪影響はありません。
しかし管理が行われない空き家があると、風景・景観の悪化、防災や防犯機能の低下、ゴミの不法投棄、放火などによる火災の発生などの心配があります。
老朽化による倒壊、外壁の落下などの事故も発生しています。
このようなことは、近隣地域の資産価値を低下させることにもつながります。
空き家増加の要因
空き家になる原因は、以下のようなものがあります。
①実家を相続したものの既に家を持っている
②遠方に住んでいて管理できない
③老後施設に入所して帰る予定がない
このほか、居住していた親が死亡したが家財道具を含めて手放す決断ができない、年に数回の帰省のために残している、相続協議が長引いている、解体の費用が出せない、田舎で買い手がいないなどの理由もあります。
さらに、これまでは固定資産税が大きな問題でした。
解体して更地にすると固定資産税の軽減措置が受けられないため、老朽化した家を残していたのです。
例えば、更地の固定資産税評価額が2,000万円の場合、1年間の固定資産税額が「2,000万円×1.4%(固定資産税率)」で28万円となるのに対して、家屋があれば、「28万円×1/6」の4.7万円ですみます。
土地活用の予定がなければ、住まなくても家屋を残しておいた方が節税になっていたのです。
そのほか、既存不適格建築の建て替え制限のため、そのままになっている場合もあります。
既存不適格建築物とは建てた時は適法であったものの現在の法律では違反となってしまう建物のことです。
そのまま使用する間は問題にはなりませんが、建て替えや大規模な修繕を行う場合は、現行の法規定に適合させなければなりません。
そのため、建て替えの際に、従来の規模での建築が不可能になることや、建物を建てることができなくなることがあります。
土地活用が期待できないため、やむを得ず、放置するというような事例が都心の住宅密集地で多くあります。
空き家対策特別措置法の施行
このような問題に対して、建築基準法では、建物の所有者に対して、建物を常時適法な状態に維持するように努力義務を課しています。
また、所有者に対して除却(建築物の取り壊し)等を命令することができます。
しかし、これまでは空き家の基準が不明確であったため、法令の適用が困難でした。
そのため、多くの自治体が「空き家条例」を定め、管理されていない空き家の情報があると自治体が調査を行い、所有者に助言や指導・勧告を行ってきましたが、それでも適正な管理が行われない場合が多くありました。
このような状態を解消するために、昨年11月に空き家対策特別措置法が公布され、本年5月に全面施行されることになりました。
問題のある空き家を「特定空き家等」(図表-2)と定義し、市町村が空き家への立入調査を行ったり、指導、勧告、命令、行政代執行の措置を取れるようになります。
そして所有者が命令に従わない場合は過料が科せられます。
さらに、指導に従わない場合は、いままで更地の6分の1だった固定資産税の軽減措置が受けられなくなることになりました。
空き家管理のビジネスチャンス
自治体の中には、空き家を減らすために、空き家の売却(賃貸)希望者と居住希望者をマッチングする「空き家バンク」に取り組んでいるところがあります。
民間でも、遠隔地にある空き家を所有者に代わって管理する「空き家ビジネス」が広がりつつあります。
定期巡回して建物の状況や庭木・郵便受けのチェックを行うものから、建物内の空気入れ替えまで行うものなど様々なサービスがあります。
官民で空き家を減らす取り組みが始まっています。