建替えが進まない老朽マンション
2014年07月25日
老朽化により建替え検討の対象となるマンションが増加しています。
現在、全国約590万戸のマンションのうち、約106万戸が1981年以前の旧耐震基準で建てられたものであり、大地震時の危険性も指摘されています。
老朽マンションの実態
マンションは1950年代以降に分譲が始まりました。
このうち築30年以上経過するものは約130万戸にのぼります。
出典:国土交通省「老朽化マンションの建替え等の促進について(平成25 年10 月24 日)」
建築から相当年数を経過したマンションは、躯体や設備の老朽化が進むだけでなく、エレベーターの未設置、耐震性や防犯性の不安などの問題も抱えています。
しかし、これまで建替えられたのは183件(約14千戸)に過ぎません。
実施中又は実施準備中は、35件となっています。
出典:国土交通省「老朽化マンションの建替え等の促進について(平成25 年10 月24 日)」
マンションの建て替えには、合意形成、資金調達、既存不適格問題など様々な困難があるためです。
今後、都市部を中心に老朽化マンションが増加していくことが見込まれ、その再生が重要な課題となっています。
老朽マンションの問題
老朽化したマンションを使い続けることは、以下のような問題が起こる可能性があります。
(1)老朽したマンションや管理放棄されたマンションが放置されると、周辺地域で防犯上の不安が生じる。
(2)地震等の災害発生時に、老朽化したマンションに居住する住民の人命が危険に晒されるだけでなく、老朽マンションの倒壊により広域避難路や幹線道路が使えなくなる。そして、周辺住民の避難・救援活動および消火活動等が阻害され、被害が拡大する。
このように老朽マンションの建替えは社会的な意義も高いのですが、建替えの実績はあまり増えていません。
合意形成がネックとなるマンションの建て替え
戸建住宅では、建替えの時期、建替えのための投資額、建替え後の間取り等については、すべて所有者が決めることができます。
しかし、マンションでは、個人の意思で建替えを決めることができません。その実施には他の区分所有者も含めた5分の4以上の合意を得る必要があるからです。
建替えには、工事費用の他、建替え検討のための初期費用や、工事期間中の仮住居費用、取壊し前と完成後の2度の移転費用も必要となります。
区分所有者は、それぞれ経済状況や家族構成、ライフステージ、年齢等が多様です。建替え費用の負担能力は区分所有者によって差があり、高齢者や低所得者は建替えに消極的になるのが実態です。
マンションに住まずに「賃貸」を行っている所有者の中には、使えるだけ使って家賃を得れば良いと考える人もいます。
耐震改修促進法とマンション建替え円滑化法の改正
このような問題を解決するために、2013年に耐震改修促進法の改正が行われました。
これまで、区分所有法では、マンションの大規模改修は、3/4以上の賛成がないと決議できませんでした。これが、耐震改修の必要性があると認定されたマンションについては、過半数の賛成で改修が行えるように緩和されました。
さらに、2014年6月に改正マンション建替え円滑化法が成立しました。
耐震改修促進法に基づく耐震診断を受け、特定行政庁から除却が必要な旨の認定を受けたマンションでは、区分所有者の5分の4が同意すれば、建物の解体と跡地売却を認められるようになりました。
これまでも区分所有者の5分の4の同意で建て替えが認められていましたが、区分所有者の意見調整に時間がかかるだけでなく、建物の解体や跡地売却は、区分所有者全員の同意が必要なため現実的ではありませんでした。
今回の改正では、区分所有者が自力で建替えるだけでなく、跡地を買い受けたデベロッパーなどによる建替えが認められることになりました。
さらに、新たにマンションを建設する際、周辺環境に貢献するなどの条件を満たせば、容積率を緩和する特例が設けられました。
マンション以外の建物の建設も可能となりました。
このような緩和策により所有者の負担が減るため、建替えが促進されると期待されています。