日本の成長戦略の柱として期待がかかる 「インフラシステムの輸出」
2014年07月07日
新興国を中心とする経済成長と急速な都市化により、インフラ需要が拡大しています。
この膨大なインフラ需要を取り込み、我が国の経済成長につなげていくために官民一体となった取り組みが進められています。
インフラシステムの輸出戦略
インフラシステムとは、生産や生活の基盤を形成するもので、発電所や電力網、鉄道・道路・港湾、情報通信、水道など幅広い分野があります。
このようなインフラシステムの輸出は、自動車や家電などの製品単体を輸出することとは、その事業内容が大きく異なります。
技術や建設工事、オペレーション、使用中のメンテナンスなどの総合的なノウハウを相手国に提供するものになるからです。
日本は、これまでにも多くのインフラシステムを海外に輸出してきました。
そして現在、新興国の成長により、全世界で230兆円/年、アジアで80兆円/年のインフラシステム需要があるといわれています。
この需要を我が国の経済成長につなげていくためにインフラシステムの輸出を「日本の成長戦略」の重要な柱の一つとしたのです。
日本の2010年におけるインフラシステム輸出の推計額は約10兆円ですが、これを2020年には30兆円に拡大する計画です。
これから、官民一体となった取り組みが進められていきます。
自治体の進出も
インフラシステムの輸出に取り組んでいるのは企業だけではありません。
日本では、水道やゴミ処理といった都市インフラの整備に強みをもつのは自治体です。
そのため、政府は地方自治体が海外に進出することを後押ししています。
自治体にとっても新たな収入源になるだけでなく、地元の中小企業が海外に事業を広げるきっかけづくりにもなります。
東京都や北九州市、横浜市、神戸市などがインフラシステムの輸出に取り組んでいます。
海外でのさまざまなリスク
インフラシステムの詳細な仕様は工事と平行して決まることが多く、さらに新興国では、政治的な変動要因も加わります。
例えば、有力者の要求で路線や仕様が変わることもあれば、建設費用が計画よりも膨らむこともあります。
インドネシア・ジャワ島での大型発電所の建設・運営事業では、所有者が用地の売却に難色を示し、工事が2年遅れることになりました。
しかし、事業者であるJパワーと伊藤忠商事の企業連合は、インドネシア国営電力と売電価格を定めた契約を交わしているため、総事業費が膨らむと、そのリスクを負わなければなりません。事業採算が悪化することが心配されています。
2011年に完成したドバイの新交通システムの場合も、建設費が予定より3,000億円も超過し、事業に参加した大林組は多額の損失を計上しました。
リスクを防ぐ契約の重要性
インフラシステムの輸出において重要なのが、契約です。
国内と商習慣が異なる海外では特に契約内容が重要になります。
しかし、日本企業はこのようなリスクに対する事前の対応や管理が甘いと言われています。
発注者や下請けとの信頼や強調を重視する傾向があり、受注を決めることを優先するため、契約で発注者側の要求を受け入れがちになってしまうからです。
一方、欧米企業は発注者側を怒らせるほど、粘り強く交渉するといわれています。
また、インフラの海外輸出では、首相や大統領のトップ会談などで受注のサポートをうけることもあります。
そうなると、事業が引き返せない状況になることもあります。
日本がインフラ輸出を進めるに当たっては、このようなリスクを防ぐために、交渉力や契約内容の見極め力を高めていかなければなりません。
新興国からも日本に対して高い期待が寄せられています。
インフラシステム輸出の主要分野における日本企業の海外受注推計
出典:インフラシステム輸出戦略 平成25年5月 首相官邸「インフラシステム輸出の主要分野における日本企業の海外受注推計」