生活基盤と地下水を守る土壌汚染対策法 | 建設・設備求人データベース

更新1121

  1. 建設・設備求人データベースTOP>
  2. 業界解説>
  3. 生活基盤と地下水を守る土壌汚染対策法

生活基盤と地下水を守る土壌汚染対策法

2014年05月15日

工場跡地の再開発において、重金属類や揮発性有機化合物による土壌汚染、地下水汚染が発見されるようになりました。この対策として、2002年に土壌汚染対策法が定められました。

 

築地市場の移転先での土壌汚染事例

東京築地市場の移転先である豊洲新市場でも土壌汚染が確認され、環境影響評価や土壌汚染対策工事が必要となりました。
豊洲新市場では、かつて都市ガスの製造・供給が行われていたため、ガスの製造工程に由来するベンゼン、シアン化合物、ヒ素、鉛、水銀、六価クロム、カドミウムによる土壌および地下水の汚染が確認されています。

 

土壌汚染対策法とは

土壌汚染対策の実施と国民の健康を保護するために土壌汚染の状況把握と健康被害の防止に関する措置を定めたものです。
以下の場合には、土地所有者等が指定調査機関に土壌調査を行わせて、その結果を都道府県知事に報告しなければなりません。

 

(1)有害物質使用特定施設の使用の廃止時
(2)一定規模(3,000㎡)以上の土地の形質変更の際に土壌汚染のおそれがあると都道府県知事が認めるとき
(3)土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認めるとき

 

調査の結果、土壌の汚染状態が指定基準を超過した場合には、「要措置区域」または、「形質変更時要届出区域」の指定が行われ、公示されます。

 

「要措置区域」とは、土壌汚染の摂取経路があり、健康被害が生ずるおそれがあるため、汚染の除去等の措置が必要な区域です。汚染の除去等の措置を都道府県知事が指示し、原則として土地の形質変更が禁止されます。
「形質変更時要届出区域」は、土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生ずるおそれがないため、汚染の除去等の措置は不要ですが、土地の形質変更時には都道府県知事に計画の届出が必要となります。「要措置区域」で摂取経路の遮断が行われた場合は、「形質変更時要届出区域」に変更となります。
いずれの区域においても、汚染の除去が行われた場合には、指定が解除されます。

 

土壌汚染の危険性

土壌汚染の危険性は、有害物質の直接摂取によるものと地下水摂取による2つがあります。両方の観点から25の特定有害物質について、土壌溶出量基準、土壌含有量基準、地下水基準が定められています。

 

土壌汚染の実態

平成23年度には、法律に基づく調査444件と自主的な調査241件の計685件の調査が行われました。そのうち要措置区域80件、形質変更時要届出区域370件が指定されています。
酸またはアルカリによる表面処理業、電気めっき業、洗たく業(クリーニング)などの施設での汚染が多くを占めています。

 

汚染除去の方法

汚染土壌の直接摂取による危険を防ぐ方法として、盛土、土壌入換え、土壌汚染の除去があります。
汚染除去の方法には、掘削除去、分級・洗浄、酸化分解、還元分解、微生物分解などがあり、対象物質や汚染の状況により選択されます。
地下水等の摂取による危険を防ぐ方法としては、地下水の水質測定と原位置封じ込め、遮水工・遮断工などの封じ込めがあります。水質測定結果は、都道府県知事に報告しなければなりません。また、封じ込めは、措置が完了しても、構造が損壊しないように管理することが必要です。

 

土壌汚染対策の課題

土壌汚染対策としては、掘削除去が選択されることが多くなっていますが、汚染土壌の搬出に伴う汚染土壌の所在不明や汚染の拡散が課題となっています。 汚染拡散を防ぐため、原位置での汚染除去推進が求められています。

 

今後の土壌汚染対策

工場・事業場の廃止段階で調査や対策を検討するのではなく、操業中から汚染防止に取り組むことが大切です。計画的に対策を行うことで、費用の面でも有利となります。多くの工場では、土壌汚染対策の視点からも作業方法の改善や設備のメンテナンスに取り組んでいます。

 

【用語解説】

■ブラウンフィールド
土壌汚染の存在、あるいはその懸念から、本来、その土地が有する潜在的な価値よりも著しく低い用途あるいは未利用となった土地のことです。環境省では、潜在的なブラウンフィールドとして、面積2.8万ha、資産価値10.8兆円と試算しています。

 

■指定調査機関
土壌汚染の調査は、試料の採取地点の選定、試料の採取方法などにより結果が大きく左右されるため、土壌汚染対策法に基づく土壌汚染の調査を行う調査機関が指定されています。指定調査機関は、土壌汚染状況調査等の技術上の管理をつかさどる者として土壌汚染調査技術管理者証の交付を受けた技術者を選任しなければなりません。平成25年11月15日時点で、649機関が指定されています。
土壌汚染対策法に基づいて調査の義務が生じるもの以外の調査を実施する場合は、指定調査機関の指定は必要ではありません。

 

転職について相談したい
経験を活かせる求人を知りたい

お気軽にご相談ください

無料転職支援を利用する