世界トップの環境レベルを誇る日本の製鉄プラント
2013年12月03日
日本の製鉄所の環境対策は現在世界トップレベルです。海外への技術協力に積極的に取り組んでいます。
鉄の歴史
鉄は青銅とともに古くから私たち人類によって用いられました。石器時代、青銅時代につづいて鉄器時代を迎え、今日の文明の基礎を築きました。
日本初の銑鋼一貫製鉄所としては北九州の官営八幡製鐵所(1901年(明治34年)操業開始)が挙げられます。
鉄の性質
鉄に含まれる炭素分が1.7%より少ないものを鋼、1.7%以上のものを銑鉄(せんてつ)とよびます。鋼は、軟らかくて伸びやすく、ねばりがあり強靭な性質を持っていますが、銑鉄は、硬くてもろい性質です。
日常、私たちは、「鋼(steel)」のことを「鉄」と呼んでいます。
鉄の作り方
鉄の主原料は、鉄鉱石、石炭、石灰石の三つです。まず、粉状の鉄鉱石を焼き固めて焼結鉱を作り、石炭を蒸し焼きにしてコークスを製造します。コークスにすることで、適度な強度と高い燃焼エネルギーを確保することができます。
次に、高炉で焼結鉱から銑鉄を取り出します。溶鉱炉の中は2,000℃近い高温になっており、焼結鉱から溶け出した鉄分がコークスの炭素に触れて還元され、銑鉄となって流れ落ちます。焼結鉱中の岩石成分は石灰石と反応してスラグとなります。スラグは、銑鉄より比重が軽いので分離することができます。
溶銑予備処理工程では、銑鉄中のリン、硫黄などの不純物を除去し、転炉で、酸素を吹き込んで炭素分を取り除きます。ここでようやく鉄鋼になります。さらに、銑鉄から炭素分を除去し、必要に応じて他の合金元素を混ぜることで、粘り強さを持つ鋼 (steel) ができます。
鋳造工程では、鋼を厚みのある鋼片に固めます。日本では、上下が開口した鋳型の上部から溶鋼を注入し、ところてんのように連続して鋼を鋳固めてゆく連続鋳造という方式を採用しています。
圧延工程では、鋳造で製造された半製品にロールで力を加えて、所定の形状の製品に加工します。工程中に熱処理を行うことで、製品の強度や性質を細かく制御します。圧延工程を終えて、厚板・薄板・形鋼・鋼管などの各種鉄鋼製品が完成します。これらに、めっき・塗装・研磨などの表面処理を行って、出荷可能な製品となります。
製鉄プラントの特徴
製鉄プラントは、広大な敷地、多くの設備や大量の水・エネルギーが必要な大規模装置産業です。そのため、プラントを建設する立地条件が非常に重要です。
①自然災害が少なく、安定して強固な地盤である、②豊富な水が確保できる、③原料や製品の入出荷に対応できる水深の深い良港がある、などです。
製鉄プラントの建設は、プラントの建設や原燃料の確保だけでなく、物流手段の確立、防災・環境対策、情報・通信環境の整備、そして従業員の生活対策なども必要であり、一つの都市を作り上げるような仕事となります。
製鉄プラントの環境対策
製鉄プラントでは、設備冷却・加工品の冷却・洗浄などに大量の水が必要で、鉄鋼製品を1t作るのに水が100t必要と言われます。このような水は、使い終わっても徹底的に回収・処理することで、極力新水の使用を削減しています。現在、日本の製鉄プラントでの水の再利用率は90%を大きく超えています。蒸発した以外はほぼ全量再利用されていることになります。
製鉄プラントでは自家発電も行っています。プラント内で発生するガスや、高炉で発生した高温高圧のガスでタービンを回して発電します。
製鉄プラントは、燃焼工程が欠かせないうえにその規模が大きいため、大気汚染物質の大きな発生源になりますし、二酸化炭素も大量に発生させます。原料としての鉄鉱石や石炭などによる粉塵被害も、近隣住民にとっての大きな問題です。廃熱によって、製鉄プラント周辺の海水温が上昇して、生物に影響を与えることもあります。
そこで、鉄鋼メーカーでは従来から、その時々の最高水準の公害防止設備を導入してきました。その結果、日本の製鉄プラントの環境対策は世界トップレベルとなっています。中国などへの技術協力などが、求められています。
粗鋼生産トップ10社 (2012年)
順位 会社名 Mt
1 ArcelorMittal 93.6
2 新日鉄住金 47.9
3 河北集団 42.8
4 宝鋼集団 42.7
5 POSCO 39.9
6 武漢集団 36.4
7 沙鋼集団 32.3
8 首鋼集団 31.4
9 JFE 30.4
10 鞍鋼集団 30.2
(出典:worldsteel association)