道路の温度を下げる遮熱性舗装~オリンピックの記録にも好影響~
2017年04月20日
東京五輪・パラリンピックに向けて、都内では道路の温度上昇を抑える遮熱性舗装を進めます。
ヒートアイランド現象の原因
都市部ではヒートアイランド現象が深刻な社会問題となっています。この原因のひとつとしてアスファルト舗装が挙げられています。都市部では、その面積の10~20 %が道路であり、表面が黒色のアスファルト舗装は、夏季の昼間の太陽光を吸収して路面温度が60℃にも達します。そして、夜間には蓄積された熱が放出され、熱帯夜の原因となります。
さらに、路面の高温化は、わだち掘れなど道路の耐久性を低下させる原因にもなっています。
赤外線を反射する遮熱性舗装
この路面温度上昇への対策として遮熱性舗装があります。
路面に遮熱性樹脂を塗布することにより赤外線を反射させ、夏季の路面温度を10℃以上低減します。夜間も舗装からの放熱量を減らすことができます(図表-1)。
遮熱性樹脂中の熱反射性特殊顔料や中空セラミック微粒子が太陽光の赤外線を反射することで、遮熱効果を発揮するのです(図表-2)。
温度上昇を抑えることで、わだち掘れも生じにくくなり、舗装の耐久性も向上します。公園や遊園地、商店街などの歩道に用いることで、歩行空間の快適性を向上させることもできます。
気化熱を利用する保水性舗装
路面の温度上昇を抑えるその他の方法として、保水性舗装があります。
保水性舗装は、道路の表層または基層に保水性を持たせ、その水分が蒸発する際に気化熱が奪われることにより、路面温度の上昇を抑制する舗装です(図表-3)。保水材には、鉱物や樹脂等を混合したグラウト材や細粒材が用いられます。
夏季の日中で10~20℃程度、路面温度を低下させることができます。
出典:路面温度上昇抑制舗装研究会
保水性舗装の課題
保水性舗装では、水分の蒸発による気化熱で温度上昇を抑えるため、蒸発した水分を補給することが必要です。
夏季に晴天が続く場合は、散水車による路面への散水や雨水やビルの中水を利用して給水を行うことが必要になります。
東京五輪に向けて
東京五輪に向けて、競技会場が集中する地域、そして新国立競技場やマラソンコースと周辺道路が遮熱性舗装の対象となっています。
夏の東京という厳しい条件での五輪ですが、できるだけ良い競技環境を提供するために日本の建設技術が活用されています。
【用語解説】
■わだち掘れ
道路の自動車走行方向に連続して生じた凸凹のことです。
■グラウト材
細かい隙間をふさぐ役割に用いられる、流動性のある材料のことです。