超高層ビルの高さ競争 ~建物はどこまで高くなるのか~
2016年10月19日
古代から人々は、より高い建物を造り続けてきました。高い建物を建てるには莫大な資金と労働力、そして高い技術が必要であり、それは権力の象徴でもありました。
建物の高さの変遷
紀元前のギザのピラミッド(147m)から始まり、19世紀ではケルン大聖堂(157m)、20世紀に入ってからはエンパイア・ステート・ビル(449m)、ワールド・トレード・センター(526m)などが、これまでの高い建物として挙げられます。現在は、2010年に建てられたドバイのブルジュ・ハリファ(828m)が世界一の高さを誇ります。
そして、高さ1,000mの超々高層ビル「ジッダ・タワー」がサウジアラビアで建設中です。総工費1兆円といわれ、完成すれば世界一高いビルになります。その一方で、計画されながら資金面や安全、環境などの問題で中断してしまった超高層ビルプロジェクトも多くあります。高層建築物の建設はそれだけ困難なプロジェクトなのです。
超高層ビルの構造
1931年(昭和6年)に建てられたニューヨークのエンパイア・ステート・ビルは、鉄骨造(S造)でした。その後、超高層ビルの構造は、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が中心になりました。鉄筋コンクリート造(RC造)よりも粘りに優れ、S造よりも剛性に優れていたからです。その後は、コンクリート充填鋼管構造(CFT)が主流になっています。近年は、高強度のコンクリートが開発され、再びRC造も増えています。ブルジュ・ハリファでは、153階までがRC造、それ以上がS造です。コンクリートを上層部まで圧送することができなかったためです。
超高層ビルの風対策
超高層建築物特有の問題が風対策です。上空は風が強いため、超高層ビルでは150km/hを超える強風に耐えなければなりません。建物自体の強さだけでなく、外壁やガラスの安全性も確認する必要があります。
さらに風は、建物にぶつかると上下左右に分かれ、吹き降ろしや吹き上げ、渦を伴った剥離流など複雑な風を発生させます。このような風の影響を抑えるため、超高層ビルでは、建物の角を丸めたり、低層部を大きくしたりしています。ブルジュ・ハリファは、風の影響を抑えるために螺旋状の形になっています。
日本の建物の高さ
日本では、1919年に施行された市街地建築物法によって、建築物の高さが100尺(約30.303m)に制限されました。これは英国の高さ制限100フィート(30.48m)にならったものでした。1950年に施行された建築基準法でも31mの高さ制限が受け継がれました。このため、都心では多くのビルが規制限界の高さで建設され31mのビルが連続するスカイラインが形成されました。
その後、1964年(昭和39年)の東京オリンピックを前に建築基準法が改正され、容積率による規制が導入されました。これにより、高さ31mを超えるビルが建てられるようになりました。1968年に日本における最初の超高層ビルである霞が関ビルディング(147m)が建設されました。
日本の超高層ビル
その後、新宿副都心などの開発計画が本格化し、1970年代末には100m以上の超高層ビルが多く建築されました。ここから、日本も超高層時代に突入したのです。1993年には、横浜ランドマークタワー(296m)、2014年には、あべのハルカス(300m)が完成しています。ビルではありませんが、東京スカイツリーは634mで世界第2位の高さとなります。
今後の超高層ビル
超高層ビルの建築には、高い技術と資金が必要です。環境重視の社会になり、莫大な資金やエネルギーを消費する超高層ビルは効率が良くないとの指摘もあります。建設中のジッダ・タワーがひとつの限界になるのではないかと考えられます。
【用語解説】
■剛性
力を受けた時の変形のしにくさ、強さのことです。
■コンクリート充填鋼管構造(CFT)
円形または角型の鋼管にコンクリートを流し込んで柱にします。充填したコンクリートによって鋼管の座屈を防ぎ、また鋼管でコンクリートの破壊が起こらないようにすることができます。鋼管とコンクリートの長所を生かし、それぞれの弱点を補強することができる構造です。
■ハイパービルディング
高さ1,000メートル以上の建築物のことです。超々高層建築物、超々高層ビルともいいます。