今月24日、三菱重工業と千代田化工建設は、原油随伴ガスから水素、炭酸ガスを製造・出荷する洋上浮体施設(H2/CO2-FPSO)を共同開発し、日本海事協会から設計基本承認(AIP)を取得した。従来のFPSOは、洋上で石油とガスを生産し、貯蔵して積出を行う設備。
このほどの洋上浮体施設(H2/CO2-FPSO)は、海底油田上に設置された洋上プラントから発生する原油随伴ガスを水蒸気改質して炭酸ガスと水素に変換し取り出すもの。炭酸ガスは自然衰退した油田の増進回収法に利用する。同時に発生する水素を、液体状態で貯蔵する新しい生産方式で、水素用のFPSOは世界初である。
水素の液体化には、千代田化工建設のSPERA水素という技術が大きな役割を担っている。その技術の有機ケミカルハイドライド法は、水素をガソリンの主要成分であるトルエンに固定し、常温さらに常圧で取り扱いやすいメチルシクロヘキサン(MCH)という液体にするもの。これをSPERA水素と呼んでいる。
そして、メチルシクロヒキサン(MCH)から、水素を取り出す技術を、同社のナノテクノロジー技術によって実用化。この技術により、軽くて貯蔵輸送の難しかった水素が、低コストで長距離輸送や大量貯蔵が可能となった。
さらに、大きな設備投資を行わずに水素サプライチェーンを構築することができるほか、扱いやすく安全な状態で水素を輸送できる。
これまで石油のFPSOは、三菱重工を含め建造、納入実績がある。しかし、水素エネルギーによるFPSOはこれまで実績がなかった。千代田化工建設が受け持つトップサイドプラントと、三菱重工が受け持つ浮体を対象に共同開発を推進、安全性評価を実施し設計基本承認(AIP)を取得した。
水素は様々な場所で製造することが可能で、二酸化炭素を出さない理想的なエネルギー。既に実用化されているFCV(燃料電池自動車)を初めとし、今後の発展が嘱望されている。今回の取り組みにより、水素エネルギーの実用化がいよいよ加速すると思われる。
▼外部リンク
千代田化工建設 ニュースリリース
https://www.chiyodacorp.com/jp/media/2014/10/#all