大成建設株式会社(本社:東京都新宿区)は、従来の免震クリアランスを半減する「都市型小変位免震」を開発した。
このシステムでは切替型オイルダンパーを採用することで中小規模・大規模いずれの地震にも対応でき、かつ快適性も損なわないという理想的構法だ。
建物の密集する同じ敷地内に複数の建物を建てたいとする建築主にとっても免震クリアランスがネックであったが、この工法を用いれば、免震クリアランスが従来の半分の30㎝に抑えられ、土地空間の有効利用に大きく貢献できる。
(画像はプレスリリースより)
主に都市部など建築空間を最大限確保しつつ、大震災時の安全性と建物の機能維持、そして中小地震時の安心感を満たすことができるという、特に高密度市街地にはうってつけの工法である。
これまでの一般的免震建築では、免震クリアランスが60cm必要であるばかりか、震度6~7クラスの大規模地震を想定し、免震層のダンパー数を増やし抵抗力を高めて免震層を小変位に抑えたが、そうすると免震層の動きが制限され、頻発する中朝規模の地震に対しては比較的居住性が損なわれるというデメリットがあった。
そこで、同社は、揺れの規模に応じて抵抗力を切り替える「切替型オイルダンパー」を開発。
頻発しやすい震度5強程度までの中小規模地震までは通常の低減衰モードで作動し、震度6強以上の大規模地震の発生時には、高減衰モードへとシフトする切替式を採用。ダンパーにあらかじめ設定された変位を超えると、機械式シャットオフ弁がオイル流路の一部を塞いで高減衰に切り替わるしくみだ。
しかも、切り替え時に電気などエネルギー供給も不要のため、有事の際も確実に作動、かつ、メンテナンスフリーという高性能かつ低コストである。小規模地震に備えての居住性と、大規模地震に備えての免震クリアランス半減による危険回避という、快適性と安全性確保の両立を実現した。
(画像はプレスリリースより)
切替型オイルダンパーは、カヤバシステムマシナリー株式会社との共同開発したものだが、切替型オイルダンパーが免震材料として国土交通大臣認定を取得(2013年)したのは国内初の快挙だ。
この構法は早速、今春竣工予定の同社のZEB化実験棟へも適用されることが決定しており、今後、新宿、銀座など主に都内の高密度市街地への導入を積極的に進める考えだ。
▼外部リンク
大成建設株式会社 プレスリリース
http://www.taisei.co.jp/release/2014/1353297868501.html