ヒートポンプ
大気、河川や海、家庭や工場から出る排熱などの熱を取り出して利用するシステムで、熱を汲み上げて他の場所に放出する動作があたかも水を汲み上げるポンプに似ていることからヒートポンプという。
気体は圧縮すると温度が上昇し、膨張すると温度が下降することを利用している。すなわちヒートポンプは圧縮機で冷媒を圧縮することで熱を発生させ、拡張することで熱を放出し冷温が可能となる。
家庭用のエアコンによる冷房を例にとる。エアコンは室外機と室内機で構成されており、室内機から設定した温度の空気が噴き出す。室外機の圧縮機(コンプレッサー)で冷媒を圧縮し高温高圧の気体を作る。圧縮機は電力によって動き、冷媒には大気のオゾン層の破壊係数がゼロであるハイドロフルオロカーボンを使う。この気体が室外機にある熱交換器によって外気で冷やされて中温高圧の液体となる(凝縮熱という)。室外機からの中温高圧の液体を室内機にある膨張弁で膨張させると室内の熱を奪い室内を冷やす(蒸発熱という)。膨張した冷媒は再び室外機に戻り、室外機で圧縮し、このサイクルを繰り返す。暖房はこの逆になる。
ヒートポンプは省エネルギー効果があり、この効率をCOP(=Coefficient Of Performance)であらわす。COPとは、消費電力1kW当たりのエネルギー消費効率(冷却・加熱能力)を表す数値で、電気ヒーターによる暖房とヒートポンプ(家庭用エアコン)による暖房を比較すると、同じ消費電力でヒートポンプは電気ヒーターの6倍の熱エネルギーを取り出せる。すなわちCOP=6となり、火力発電から得られる電力をヒートポンプでは6倍利用できることから省エネルギーとなり、かつ地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の発生量も抑えることができる。ヒートポンプの効率は、インバータによる運転制御、冷却ファンの高効率化、熱交換器の性能向上、コンプレッサーの改良などの技術改良によって15年前と比較すると約2倍になった。
ヒートポンプは産業用・家庭用のエアコン、給湯器、冷蔵庫、洗濯乾燥機、温水床暖房など向上、医療・福祉、宿泊施設、農業、工場などで使われている。