タービン
流水、蒸気、ガス、空気などの作動流体が持つ運動エネルギーを回転運動に変え、動力として利用できる機械。
蒸気から運動エネルギーを得る蒸気タービン、圧縮した空気やガスを膨張させて運動エネルギーを得るガスタービン、水の位置エネルギーを利用する水力タービンなどがある。
■蒸気タービン
蒸気タービンは大動力を比較的簡便な設備で発生でき、大型火力発電所などで使われている。ガスタービンは火力発電所などの発電機、船舶などの駆動に、またジェットエンジンとして航空機に使われている。水力タービンは水力発電に使われる。
蒸気タービンは石炭、石油、ガスなどの化石燃料、あるいはバイオマス、ゴミなどの廃棄物を燃料とし、ボイラーで高温、高圧にした蒸気をタービン内に導き、ノズルから噴出させる。蒸気は減圧(膨張)すると高速流となり(ベルヌーイの定理)、この蒸気を風車状の羽根(羽根車)に衝突させ、その衝撃力で羽根車を回転(速度エネルギーを動力エネルギーに変換)させる。蒸気タービンは動力を伝える軸を回転させるために、回転軸を囲み込むように円周上に多数の翼(動翼という)を持つ数個の円盤が軸にそって取り付けられており、これをタービン翼という。タービン翼は蒸気の供給口を持った容器(タービン車室という)内に設置されている。
タービン車室の内壁には、効率よく供給された高温高圧の蒸気が動翼にあたるように調節する静翼が取り付けられており、この静翼はタービン翼ごとに備えられている。静翼とタービン翼の対を段落と呼び、蒸気のエネルギーを効率よく利用するために多数の段落(多数段という)が設けられている。蒸気入口から吸入された蒸気は最初(1段落)の羽根車を回転させると、静翼によって方向が変えられ次の列の羽根車に作用し、この動力で発電機の軸を回転させると電力が得られる。
蒸気タービンの動作原理はベルヌーイの定理と熱力学第二法則による熱サイクルの最高温度と最低温度との差が大きいほど熱効率が高くなることを利用しており、タービン材料の耐熱性の限界から蒸気温度は600℃に設定されている。
蒸気タービンは蒸気のエネルギーを利用する方法によって衝動式と反動式がある。衝動式は静翼で蒸気の圧力エネルギーを速度エネルギーに変え、静翼から噴出する高速の蒸気に当たる衝動力によって動力を発生させる。一段落当たりの熱効率を大きく取れるので段落数は少ないが、タービン翼は大型で幅広となる。反動式は動翼内で蒸気の圧力エネルギーを速度エネルギーに変え、動翼から噴出する蒸気の反動力も利用して回転力が発生する。一段落当たりの熱効率が小さく段落数は多くなるが、タービン翼は小型となる。
■ガスタービン
ガスタービンは燃料となる軽油、灯油、天然ガスなどを燃焼することで動力を得る機械。圧縮機、燃焼器、タービン、そしてこれらを収める車室によって構成される。圧縮機で空気を圧縮し、高圧になった空気に燃焼器で燃料を噴射し燃焼する。高温高圧になった気体がタービンを回転させ、動力を得る。動力を回転力として取り出し、発電機の軸を回転させると電力が得られる。そして、タービンの回転は圧縮機の回転にも使われる。また、タービンの回転を回転力としてではなく、排気する気体を加速しタービンジェット噴出することで推進力が得られる。タービンの下流にノズルを設け排気ガスの速度や圧力を調節する。これが航空機のジェットエンジンである。
ガスタービンの性能は比出力と熱効率で表すことができる。ガスタービンに流入する気体の単位流量当たり取り出せる動力である比出力を大きくすると、同じ動力を少ない作動流体で得られることから小型化でき、高い熱効率は消費燃料を少なくすることができる。比出力を大きくし、熱効率を高めるために圧縮機で空気を高圧にすることで燃料の高温化を図るが、タービン材料の耐熱性に依存するため、タービン翼にセラミックなどの高耐熱性材料をコーティングすることで耐熱性を高めている。現在、ガスタービン入口の温度は1500℃が達成されている。
ガスタービンも蒸気タービンもタービンは気体で回転させるため、タービン翼の形状は似ている。ガスタービンの排熱温度は550℃で、蒸気タービンの蒸気温度は600℃とほぼ同温度となる。ガスタービンの排熱ガスを利用し、蒸気タービンのボイラーに排熱ガスを導いて水を沸騰させて高圧高温の状態にし、蒸気タービンを駆動し発電するコンバインド発電が発電効率を上げている。
高所から水を落とし、それを水車(羽根車)に当てて流水のエネルギーを利用するのが水力タービンで、水車の形状と利用する方法によってフランシス水車、ベルトン水車、プロペラ水車などがある。水車の翼は1枚。水車の回転で発電機を動かし電力を発生させる。