浸透膜
一定の大きさ以下の分子、またはイオンを透過させる膜をいう。透過しない溶質と透過する溶媒の濃度の異なる溶液を浸透膜で仕切ると二つの溶液の濃度を同じにしようと濃度の低い溶液の溶媒が濃度の高い溶液に透過(移動)する。このとき透過した溶媒による溶液面上昇分が浸透圧となる。この溶液に浸透圧以上の圧力を加えると減少が逆になり、このときの膜が逆浸透膜になる。
浸透膜は低分子の溶質やイオンは通過するがコロイド粒子は通過できないためコロイド粒子の精製に使われ、腎臓の人工透析に利用されている。フェロシアン化銅の沈殿膜やコロジオン膜、膀胱膜などが以前は用いられたが、今日では再生セルロース、アセチルセルロースなどや,ポリアクリロニトリル、ポリスルホンなどの孔径の異なる合成高分子膜が作られ、分離・精製の目的で使われている。
浸透圧を利用した「浸透圧発電」が2014年の商用化に向けて開発が進められている。浸透圧の水圧で発生させた水流でタービンをまわして発電する。日本とノルウエーが実用化を目指しており、日本では大型海水淡水化施設で逆浸透膜によって濃縮された海水と下水処理施設で下水処理した淡水を浸透膜を介して発生する浸透圧が利用されている。これは濃縮された海水を直接海に放出すると生態系が破壊されるため、浸透圧発電によって海の塩分と同濃度にして海に放出するというメリットもある。