一流の建設技術者は旅に出る【Vol.3】建設技術者が行くべきところ

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(15)一流の建設技術者は旅に出る【Vol.3】建設技術者が行くべきところ

pixta_24409305_M_R「旅にでよう」といわれてもどこにいけばよいかわからない、という人も多いことだろう。今回は建設技術者がどのようにして旅先を決めるとよいか考えてみよう。
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登場人物
地場建設会社 昭平建設
青木建一 現場担当 25歳
今野真一 係長 30歳
武上幸一郎 工事課長 40歳
岩下厳五郎 工事部長 50歳
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日本代表の自覚が出る

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岩下;旅をすると、その領域の代表になるんだ。
青木;領域の代表って何ですか。

 

岩下;例えば外国に旅行に行って、行儀悪く食事をしていると「青木さんは行儀悪いな」でなく「日本人は行儀悪いな」となってしまうんだ。
青木;僕も日本で外国人を見ると「●●の国の人は声が大きいな」などと思ってしまいます。

 

岩下;旅に出ると「代表」としての自覚が高まるようになる。日本人代表、●●県代表、そして建設業界代表、というようだ。
今野;建設業界代表となると任務が重いですね。

 

岩下;私たちは、常に建設業界の代表として仕事をしないといけない、と私はいつも考えているんだ。子ども達から見て「建設業で働く人はかっこいい」と思われると、たくさんの人が建設業に入職し、活気がある業界にすることができるぞ。その意識を高めるためにも旅に出ることは有効なんだ。
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孤独に対して強くなれる

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岩上;旅に出ると孤独に対して強くなれる
今野;私は知らない国に行くたびに、孤独を感じます。周りの人が言っていることが理解できないし、何か白い目で見られているように思うのです。
青木;それをどうやって解決するのですか。

 

今野;私はまずはあえて孤独を楽しむようにしています。日常生活では一人きりになることが少ないからね。孤独の時間を有効に使って将来の夢や、自分のあるべき姿などをじっくり考えるんだ。あえて現地に住む人たちに話しかけずに孤独になれることも大切だと思う。普段の生活だと雑音がたくさん耳に入ってくるけれど、旅先で感じる静寂は何にも代えがたいよ。
岩下;確かに一人の時間を持つことは大切だな。じっくり物事を考えたり、普段読めないような本を持っていくと、思わぬ施工アイデアが浮かぶものだ。

 

今野;工事現場では、自社の社員は一人のことが多いし、基本的に孤独なんです。発注者や近隣住民、そして協力会社がすべて敵に見えることもありました。そんな時に、旅をして身につけた孤独を楽しむ方法を実践すると、現場をスムーズに運営させることができました
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地図でなくコンパスを持つことの大切さを理解できる

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pixta_22912127_M_R岩下;どこを旅先にするかを決めるにあたって、地図は大切なツールだけれど、それよりも旅で何がしたいか、何を学びたいか、という目的を決めるための「コンパス」が重要だ
青木;「コンパス」って何ですか。
岩下;方位磁石だ。どんな状況でも針は北を指す。つまりどんな状況になっても動かない目的である「コンパス」を持って旅に出ると得るものが多い
青木;旅って楽しむだけではないのですか。
岩下;「楽しむ」のも目的だ。そうであれば、徹底して楽しいところに行くのがよい。例えば「その地を知る」ことが目的なら、その土地ならではのところに行ったり、その土地に住む人に話を聞くのがよい。
青木;常に自分で決めた針の指す方向に向かって旅をするのですね。

 

岩下;私は以前台湾を旅したことがある。台湾は戦前、日本国だった。その時に日本人建設技術者が台湾にて多くの建設物を作り、台湾の人たちの生活を豊かにしたんだ。日本人建設技術者の足跡をたどり、日本の建設技術のルーツを確認することがその旅の私の目的だった。そこには、土木技術者八田與一が作った烏山頭ダムがあった。そのダムは、嘉南(台湾南部)にあり、高さ66.7 m、ダム延長1273 m、堤体積1102万m³の巨大なものだ。完成当時、東洋一のダムだった。また水路も嘉南平野一帯に16,000kmにわたって細かくはりめぐらされ、10万ヘクタールを超える農地に灌漑用水を提供し、荒れ地を農地に変えたんだ。このことで台湾の人たちの生活は一変し豊かな生活ができるようになった。
青木;すごいですね。そういうことは実際に行ってみないとわからないですね。

 

岩下;まずは出かけて行って欲しい。そして感じて欲しい。その中で、自分自身の「コンパス」を持って生きて欲しい。そのために旅が役に立つと思うんだ。
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人が成長するためには刺激が必要だ。その刺激とは「自覚」であり「孤独」であり「コンパス」である。

 

この3つを旅から学ぶことで一流の建設技術者を目指そう。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。