一流の建設技術者は旅に出る【Vol.2】旅から学ぶこととは

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(15)一流の建設技術者は旅に出る【Vol.2】旅から学ぶこととは

160914_pixta_23500698_M_R建設技術者は、たくさんの失敗をすることだろう。またアイデアに行き詰まることもある。そんな時、スムーズに解決するためには旅に出ていることが役に立つものだ。

 

今回は旅から学ぶことについて考えてみよう。
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登場人物
地場建設会社 昭平建設
青木建一 現場担当 25歳
今野真一 係長 30歳
武上幸一郎 工事課長 40歳
岩下厳五郎 工事部長 50歳
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失敗を許せるようになる

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岩下;旅をすると普段の生活では学べないようなことを身につけることができるぞ。
青木;旅って楽しいだけではないのですか。

 

岩下;旅に出ると失敗するものだ。電車に乗り過ごしたり、レストランで思ったような食べ物がでてこなかったり。
青木;僕も外国でレストランのメニューを見ても何が書いてあるのか、さっぱり分かりません。

 

岩下;失敗=悪ではなく、失敗=成長だということに、実体験を通して学ぶことができる
今野;そうですね。何度も失敗しているうちに、どのメニューが何を指しているのかが、次第にわかるようになってきます。

 

岩下;失敗の数とは、挑戦した数のバロメーターだ。失敗とはやがてくる大成功の準備なんだ。つまり旅に出ると成功の準備をすることができるんだ。そして人の失敗も許せるようになる。失敗を「悪」でなく「成長」と考えることで、その人の成長を応援しようという気持ちになるものだ。

差でなく違いを認識できる

岩上;知らないところにいくと違和感があることが多いね。
今野;そうですね。知らない国に行くたびに最初は居心地の悪さを感じます。
岩下;そんな違和感を楽しめる人と楽しめない人の違いは何だと思う?
青木;順応性の違いですか。

 

岩下;違和感を「差」として感じるか、「違い」として感じるかだよ。「差」というのは優劣を付ける時に使う言葉だ。あの会社よりこの会社の方が利益率は高い、とかA君よりB君の方がお客様からの評価が高いとか。
青木;私はいつも「おまえの現場の利益率は、全社平均より低い」と叱られます。
岩下;それに対して「違い」では優劣は付けない。男女の違い、国の違い、文化の違い、などだ。

 

青木;土木と建築の違い、とか国土交通省と都道府県の工事の違い、ですね。
岩下;いろいろな地方やいろいろな国を旅する中で身につけられることは、異国や異文化に接したときに、それを「差」でなく、「違い」として認識する習慣なんだ。優劣でなく、「違い」であれば、その違和感に寛容になれ、受け入れることができる

 

今野;私はイタリアに行ったとき、あまりに時間に対してルーズなことに最初は頭に来ましたが、それはその地の文化なんだと受け入れるようになりました。その後は、日本でも電車が少々遅れてきても気にならなくなりました。

 

岩下;人をむやみに否定するのではなく、相手との違いを認識しよう。私とあなたは違って当然。あなたもいいし、私もいいという考え方は、旅に出れば出るほど身につくようになる。建設現場では多くの人が一緒に働くので、様々な考え方を持つ人もいるだろう。そこで、お互いを認め合うことができるようになれば、現場をスムーズに運営することができるようになるだろう。

 

青木;旅にでれば、現場をスムーズに進めることができるようになるんですね。

アイデアの巾は移動距離と比例する

160914_pixta_23447293_M_R岩下;最近の現場では様々な創意工夫や技術提案を求められる。
今野;工事成績の評価基準にも創意工夫して施工をしたことが含まれているので、いつも頭を悩ましています。
岩下;旅に出ると多くのアイデアが出るようになるぞ。

 

青木;いろいろな工事事例をみるような旅ですか。
岩下;必ずしも工事事例を見るだけじゃないよ。アップルを創業したスティーブジョブズは考え事をするときには、散歩をしたそうだ。アップルの本社は円のように丸くなっているけれど、それは歩き回るのに楽だからだそうだ。

 

青木;歩くとアイデアがわきやすくなるのですね。
岩下;アイデアの巾は移動距離と比例するんだ。移動すると目で見る風景が変わり、空気の臭いが変わり、音が変わる。食べ物の味も変わるし、手で触れる土の感触も変わるだろう。そんな五感への刺激が脳への刺激となりアイデアの源泉になる。旅をすると体全体が敏感になるんだ。そうすると思ってもいなかったことを発想することができる。考えことをする際に、電車ではなく、わざわざ飛行機に乗り雲の上から空を眺める人もいるんだよ。

 

青木;では現場の創意工夫に悩んだときには、社員全員で海外に旅行に行きましょう。
岩下;そんなに遠くへ行かなくても、目的なく電車に乗ったりドライブすることも、アイデアを浮かべる秘訣だ。現場で創意工夫のアイデアに行き詰まったら、行ったことのない場所で、その地の感触を体で感じるといいよ。
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旅に出ると失敗を許せて人に対して優しくなれ、人間関係を良好にでき、そして多くのアイデアを思いつくことができる。異なる風景に身を委ねることが大切だ。

 

旅から学ぶことを習慣にしたいものだ。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。