(13)工事成績評価を上げる方法【vol.1】工事成績評定を上げる7つのポイント
公共工事では、工事終了後「工事成績評定点」が発注者によって付けられる。その点数は、その会社が以降に受注しようとする工事の綜合評価点として加点されることが多くなってきた。
つまり、「工事成績評定点」を上げることは受注を増やすために重要な経営課題となっている。
今回は、「工事成績評定点」を上げるための7つのポイントを解説しよう。
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登場人物
地場建設会社 昭平建設
青木建一 現場担当 25歳
今野真一 係長 30歳
武上幸一郎 工事課長 40歳
岩下厳五郎 工事部長 50歳
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工事成績評定点を上げるためには
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岩下;公共工事では、工事完了時に「工事成績評定点」として発注者に評価されるね。その評価結果が、次の総合評価方式における工事の受注時に影響することはみんな知っていることと思う。そのため、なんとかして評定点をアップさせたい。
今野;私も工事成績評定点を上げたいと思っていますが、なかなか思い通りになりません。いつも同じところで減点されるのです。
武上;工事成績評定点を上げるためには7つのポイントがある。それをきちんと理解した上で実践することが重要だ。
1. 【改善力】現状を分析して改善する
武上;たとえ施工時にミスをして、低い点数をとってしまったとしても、今後同じミスを繰り返さないように反省し、次の工事に活かすことが重要だ。
青木;私はいつも「品質」の得点が低いのですが、なぜ低く評価されているのかわからないのです。
武上;工事が終わったら評価基準に沿って分析し、何が評価され、何が評価されなかったかを正確に把握しなければならない。合計点だけでなく、個別項目の点数を分析しなければならないよ。
2. 【対応力】コミュニケーションの難しさを知る
武上;発注者、協力会社、社内のコミュニケーションが不十分なために様々な問題が発生し、評価点を下げているね。
青木;僕は発注者から、「君の言っていることはよく理解できない」と言われることがあります。
武上;年齢も立場も異なる人が相互にわかり合うことは本当に難しいことだ。大切なことは、「わかりあうことは難しいものだ」ということを意識してコミュニケーションをとることだ。メールだけでなく電話で確認することもその方法だよ。
3. 【調査力】発注者のニーズとウォンツを先取りする
武上;当然のことながら顧客が欲することをしてこそ高評価になる。
今野;でも私は顧客が何を求めているのかがわからないことがあります。
武上;無口な顧客もいるからね。でも顧客が欲していることを理解するのは、あたりまえ。高得点を取るためには、顧客が欲していることを予測し、先取りして把握し、実行しなければならない。
4. 【親密力】住民との対応を強化する
武上;公共工事の場合、税負担をしている住民こそが真の顧客だ。しかも近隣住民には、直接の利益がないのに多大な負担を強いられることが多い。
青木;僕の自宅の近くで別の建設会社が工事を行っていて、大きな騒音や車の渋滞にはやはり頭にきましたね。
武上;近隣住民には、最大限の配慮をしないといけないね。また公共工事のみならず、近隣配慮することは、工事をスムーズに進行させるポイントだよ。
5. 【組織力】会社のバックアップ体制を構築する
武上;顧客は現場担当者個人ではなく、建設会社に工事施工を依頼しているんだ。
岩下;それは工事施工を現場代理人に任せっぱなしではいけないということだな。
武上;そうです。現場組織だけで施工するのではなく会社全体でフォローして工事進行をバックアップすることは、発注者にとって大きな安心材料にもなります。
6. 【技術力、管理力】個の力を磨き高める
武上;会社がバックアップすることは大切だけれど、やはり現場管理者自身が自己研鑽し、技術力、管理力を常に磨き、高め続けることが何より大切だ。
今野;そうですね。現場担当者は命がけで現場を守る必要があると思っています。サッカーの本田選手も「個の力」が大切だと言っていますね。
武上;個々の力を少しでも高めることで、信頼される工事現場を作り出すことができるんだ。
7. 【創造力、発想力】創意工夫、技術提案を推進する
武上;青木君、図面どおり施工しただけでは、工事成績は上がらないぞ。よりよい方法はないか、常に追求していなければならない。
青木;日々施工方法を工夫することが大切なのですね。
武上;そうだ。品質、原価、工程、安全、環境の各項目に対して創意工夫をしたり、新たな提案をすることは工事の質を高めるために重要なことだ。
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ここまで「工事成績評定点」を上げるための7つのポイント概要を解説した。この7つのうち、自分はどこが苦手で、どこが得意かを知ることが重要だ。自分の癖や習慣のため、いつも同じような失敗をして、点数が下がっている可能性がある。
「工事成績評定点」は普通に施工していても75点止まり。80点以上を獲得するためには、普通とは異なる方法で施工しなければならない。そのためには、これら7つのポイントを実践することが大切だ。
降籏 達生 ふるはた たつお
建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。