受注で勝つ建設業の技術提案【vol.4】効果的な対策を考える

更新1121

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(9)受注で勝つ建設業の技術提案【vol.4】効果的な対策を考える

作業着を着て微笑む男性評価の高い技術提案書の書くための3つのポイントのうち、今回は「3.効果的な対策を考える」について解説しよう。

 

適切な着眼点を把握したあとは、効果の高い対策を考案する必要がある。
どのようにして効果的で効率的な対策を立案するかを考えてみよう。
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登場人物:
地場建設会社 昭平建設
・青木 建一 現場担当 25歳
・今野 真一 係長 30歳
・武上 幸一郎 工事課長 40歳
・岩下 厳五郎 工事部長 50歳
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着想、連想、発想、予想

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岩下;適切な着眼点を見つけたら、次にその問題を解決できるような対策を立案する必要があるぞ。
青木;そうと分かってはいるのですが、なかなかよい対策を思いつかないのです。

 

武上;そのときは、着想、連想、発想、予想の順に考えるとよい

 

青木:着想、連想、発想、予想ってなんですか?

 

武上;「着想」とは、「あっ!」「えっ!」というひらめきだ。いろいろなことに関心を持ち驚きを感じることだ。
次に「連想」とは、「はてな?」と疑問を抱き工事への応用を考えることだ。さまざまなことに視野を広げることでもある。
そして「発想」とは、自分の考えを他人に話して意見を聞いたり、多くのメンバーで討議したりして考えを膨らませることだ。
そして最後に、「予想」として、アイデアを具体化、現実化する。ただ発想するだけではビジネスにならない。
自分以外の人たちやお客様はいったい何を期待しているのかを5W1H(なぜ、なに、いつ、どこ、だれ、どのようにして)まで具体的に決めることで対策となる。

 

今野;例えばコンクリートにジャンカが発生するおそれがあったとしよう。
「着想」とは、「あっ、自動ドアは人が通ると反応している」と感じること。
そして「連想」とは「はてな、コンクリートが通ると反応するようなセンサーがないだろうか」と考えることだ。
次に「コンクリートの充填度を確認する検知器を型枠に設置しよう」と「発想」する。
「予想」とはこれらのことがらを次のように5W1Hにて具体的に決めることだ。

 

・なぜ(Why);コンクリートの充填度を確認しながら打設することでジャンカを防ぐ
・なにを(What);コンクリート検知器の設置
・いつ(When);コンクリート打設前
・どこに(Where);型枠1m間隔で
・だれが(Who);大工さんが
・どのようにして(How);検知器を釘にて固定し、アラームに接続配線する
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オズボーンのチェックリスト

資料を読む男性----------
岩下;対策を考案するのに効果的な、オズボーンのチェックリストを知っているかい。
青木;オズボーンってなんですか。

 

武上;アレックス・F・オズボーンが作った発想法で、あらかじめ準備したチェックリストに答えることでアイデア発想する方法だ。

 

転用、応用、変更、拡大、縮小、代用、再配列、逆転、結合の9つのチェックリストがある。
それぞれ次のような意味だ。

 

1.転用 :新しい使い道は?他分野へ適用はないか?
2.応用 :似たものはないか?何かの真似はできないか?
3.変更 :意味、色、働き、音、匂い、様式、型を変えられないか?
4.拡大 :より大きく、強く、高く、長く、厚くできないか?時間や頻度など変えられないか?
5.縮小 :より小さく、軽く、弱く、短くできないか?省略や分割できないか?何か減らすことができないか?
6.代用 :人を、物を、材料を、素材を、製法を、動力を、場所を代用できないか?
7.再配列 :要素を、型を、配置を、順序を、因果を、ペースを変えたりできないか?
8.逆転 :反転、前後転、左右転、上下転、順番転、役割など転換してみてらたどうか?
9.結合 :合体したら?ブレンドしてみたら?ユニットや目的を組み合わせたら?

 

青木;9つもあるのですね。実際にこれらはどのように活用されているのですか。

 

武上;タニタ食堂は自社の社員食堂のメニューを「転用」したものだ。
また、一時期はやった食べるラー油は、添加物だったラー油を「応用」して食べる用途を作った。
ポメラ(キングジム)は、機能を書くことだけに「縮小」したもの。
フェイスブックは個人情報を「再配列」して検索できるようにした。
iPhoneは音楽プレーヤーiPodに携帯電話を、また、ブラトップ(ユニクロ)は、タンクトップとブラジャーを「結合」させものだよ。

 

青木;建設工事にこれを生かすにはどうすれよいですか。

 

武上;建設工事に活用した事例を解説しよう。

 

1.転用できないか
乗用車に使用しているバックモニターを建設機械に転用して安全作業を行う。

 

2.応用できないか
食事の保存や保護に用いるラッピング材を、鋼材の異物付着防止、保護性錆の生成促進に応用する。

 

3.変更できないか
散水して粉塵の発生を防止しているのを散水をミスト散布に変更することで、浮遊している粉塵をキャッチして沈降させることができる。

 

4.拡大できないか
仮設足場面積を広げることで、大型クレーンを使用しブームの旋回回数を減らし工期短縮する。

 

5.縮小できないか
足場設置個所を縮小し、高所作業車を使用することで作業が効率化する。

 

6.代用できないか
竹そだや竹チップを濁水処理材として代用し汚水の浄化をすることができる。

 

7.再配列できないか
異常気象、洪水の影響を減ずるために、工程を入れ替えて、河床部分を先行して施工する。

 

8.逆転できないか
コンクリート締固めに用いるバイブレーターに螺旋状の溝をつけ右回転、左回転と回転方向を逆転させることで振動電動効率を高める。

 

9.結合できないか
サニーホースとコンクリートポンプ車用ソケットを合体しコンクート打設箇所に事前配置するとブームの盛り替え時間の短縮ができコールドジョイント防止ができる。

 

青木;ただ単に考えるのではなく、9つの項目をもとに考えることで、アイデア発想の幅が広がるのですね。
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対策アイデアを発想するためには、着想、連想、発想、予想の順に考えたり、オズボーンのチェックリストを活用するとよい。
いつも同じような施工方法をするのではなく、その現場状況や工事内容に応じた新しい施工方法を考えながら施工することが重要だ。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。