(8)今すぐできる環境対策【vol.3】環境法規を理解せよ
環境に関する法律は、昭和40年代の高度成長以降環境被害が続出したことを受け、法制化され、問題が発生する都度、頻繁に改正されている。
そのため、常に最新の法令をチェックしておく必要がある。
法違反を犯してしまえば、たとえ法律の内容を知らなかったとしても、許されるものではない。
今回は、建設工事に関連する環境法規を解説しよう。
廃棄物処理・リサイクル関係法令
建設工事では多くの廃棄物を排出する。
化学物質が含まれることは少なく質的な影響は小さいが、量的にはもっとも多くの廃棄物を排出する業界である。
廃棄物の不法投棄を防ぎ、可能な限りリサイクルによって再利用することが求められている。
1.廃棄物処理法
汚でい、廃油、廃プラ、建設木くず、建設紙くず、建設繊維くず、金属くず、ガラスくず及び陶磁器くず、がれき類、ゴムくず、コンクリート破片などを「産業廃棄物」と呼び、次の事項が求められている。
・処理許可業者を確認すること(不良、不適格業者の排除)
・排出時にマニフェストを交付し、廃棄物処理後に、マニュフェストを回収し照合すること(不法投棄の防止)
・前年度廃棄実績を毎年6月30日までに報告すること
2.労働安全衛生法
・解体・改修工事に伴う「石綿」撤去作業時にこれを吸い込むと病気になるおそれがある。作業開始前に労働基準監督署に建築工事計画届を提出すること
・作業環境測定(6ケ月以内ごとに 1回)健康診断(6ケ月以内ごとに1回)を実施すること
3.リサイクル法
・再資源利用計画書、再資源利用促進計画書の作成し減量を目指すこと。
4.建設リサイクル法
大規模工事(解体工事-80㎡以上、新築・増築工事-500m3以上、修繕・模様替工事-1億円以上、その他の工作物に関する工事(土木工事等)-500万円以上)の場合には、リサイクルの状況についての届け出をすること
大気汚染関係
建設工事に伴い、焼却によるばい煙、土砂の粉塵、石綿、フロン(オゾン層破壊)、ホルムアルデヒド(人体への影響)等によって生じるおそれのある大気汚染を抑制することが求められている。
1.大気汚染防止法
・廃棄物焼却炉を設置して建設廃棄物の焼却する場合、ばい煙発生施設の設置届、ばい煙量の測定をする
・土砂の堆積場及び右記の施設を設置する場合(密閉型は除く)一般粉塵発生施設の設置届を提出する
・解体・改修工事に伴う「特定建築材料(石綿等)」の除去作業を実施する場合、作業開始14日前に計画書を提出する
2.オゾン層保護法
解体工事、改修工事においてオゾン層に影響がある空調設備、消火設備等は専門業者により回収・破壊する
3.フロン回収破壊法
エアコン、冷蔵・冷凍機器(ショーケース、自販機、冷水器等々含む)の機器の廃棄を委託された場合「委託確認書」の受理と写しの保存、及びフロン回収業者の「引取証明書」の受理と写しを保存(3年間)する。
4.建築基準法
内装仕上げ・換気設備及び天井裏等の工事において、以下の規制がある
・石綿含有建材の使用禁止
・クロスピリホス添加建材の使用禁止
・ホルムアルデヒドに関する規制(①内装仕上げの規制、②換気設備の義務付、③天井裏等の制限)
騒音、振動、悪臭
建設工事に伴い騒音、振動、悪臭があると近隣住民に悪影響を及ぼす。
なお地域やその地域の用途によって条例にてさらに厳しく規制されていることが多いため、工事開始前に確認することが必要である。
1.騒音規制法
杭打ち機、びょう打機、削岩機、空気圧縮機等を使用する作業において、知事(市町村長)へ7日前までに届け出し、作業敷地境界にて85デシベル以下とする
2.振動規制法
杭打ち機、くい抜き機、ブレーカー 、舗装版破砕機を使用する作業において知事(市町村長)へ7日前までに届け出し、作業敷地境界にて75デシベル以下とする
3.悪臭防止法
悪臭発生の可能性のある作業(塗装工事・アスファルト防水工事・汚泥乾燥等)では、以下が求められている
①特定悪臭物質又は臭気指数の規制基準遵守する
②ゴム等悪臭発生原因物を焼却しな
③悪臭発生の恐れの有る汚泥は現場処理しない
④アスファルト防水材加熱時の悪臭削減剤を使用する
⑤臭気の著しい溶剤、塗料等を使用する場合の1回での作業量や時間帯を検討する
水質汚濁
建設工事に伴い、公共用水域(海、川)に排水する場合は「水質汚濁防止法」「河川法」、下水道に排水する場合は「下水道法」、浄化槽を設置する場合は「浄化槽法」が適用される。
水質はいったん悪化すると、元に戻すには数十年の年月を要する。十分な注意が必要だ。
1.水質汚濁防止法
公共用水域へ排水する施設(生コンクリートのバッチャープラント、砕石の水洗破砕施設、水洗式分別施設、砂利採取の水洗分別施設(特定施設))設置の際は以下の必要がある
・知事に60日前までに届け出
・排水基準(排水基準を定める総理府令)測定を実施
2.下水道法
公共下水道への排水(一日50m3以上の汚水を公共下水道に排水する場合)は以下の必要がある
・公共下水道管理者にあらかじめ届け出
・排水基準 (有害物質は排水基準を定める総理府令)、生活環境項目については、条例による。
3.河川法
河川への排水(一日50m3以上の汚水を河川に排水する場合)は以下の必要がある
・河川管理者にあらかじめ届出
4.浄化槽法
浄化槽(合併処理浄化槽)を設置する場合は設置の届出、および使用廃止後30日以内の届出を実施する。
土壌汚染
土壌汚染対策法は、土壌汚染された土地の所有者等に対する規制だが、汚染土壌を搬出する段階で施工業者にも規制がある。
・土壌汚染対策法
土壌汚染のおそれがある土地(3,000㎡以上)の土地形質の変更の際は、工事着手日の30日前までに都道府県知事に届出し、土砂排出の際はマニュフェストを発行する
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上記の法規制以外に、地方公共団体の条例や、指針、要綱、マニュアル、ガイドラインがある。
工事開始前に、市町村の環境法担当部署に問い合わせて、当該地域に該当する法規制について確認したのち施工する必要がある。
環境はいったん汚染してしまえば、元の状態に戻すのに長い年月がかかる。
美しい地球を守るためには、「環境法規制を知らなかった」ではすまないのだ。
降籏 達生 ふるはた たつお
建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。