(5)今すぐできる原価低減【vol.2】彼女とのデートの予算を守るためにはどうする?
原価低減には5つのポイントがある。これらを着実に実践することで必ず原価を低減することができる。
前回は、ポイント1「旗を立てよ」、ポイント2「行き方を変えよ」を解説した。
さらに原価低減を実践するためには、現場のムダを省き、中間チェックしながら改善することが重要だ。
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登場人物:
地場建設会社 昭平建設
・青木 建一 現場担当 25歳
・今野 真一 係長 30歳
・武上 幸一郎 工事課長 40歳
・岩下 厳五郎 工事部長 50歳
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ムダを省け
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武上「原価低減のための2つのポイントは理解できたかい」
今野「1つめが旗をたてること、つまり予算を事前に明確にすること。2つめが、行き方を変える、つまりこれまでとは異なる施工方法を考えることですね」
武上「そうだ。では3つめのポイントをまずは山登りに例えて話そう。行き方が決まったら、まっしぐらに山頂を目指さないといけない。しかし、きれいな花を見かければ立ち止まったり、もしくは、一緒に登る仲間の連携が悪くスムーズに登れないことがある。そこで3つ目のポイントは「ムダを省け」である。旗に向かって自ら決めた道をまっすぐ、ムダなく歩かなければならない」
今野「青木くんはおしゃべりだから、歩きながらムダ話ばかりしそうだな」
青木「はい、登山は辛いなので、きっと楽しく登ろうとおしゃべりするだろうなあ」
武上「原価管理でいうムダには4つある。手すき、手待ち、手戻り、手直しだ」
今野「手すきとは、作業と作業の間に隙間ができてしまうことですね。例えば基礎ができているのに鉄骨建方ができずに、日が空いてしまうことによるムダですね」
武上「そうだ。青木くん、手待ちとはどういう状態だと思う?」
青木「手待ちとは、ことばのとおり、作業待ちが発生してしまうことですね。例えば作業に取りかかろうと思ったら、資材が不足していたり、前の工程が遅れていたり、クレーンが別の荷物を運んでいて、荷揚げ待ちだったりすることです」
今野「そういえば、青木くんは待ち合わせでいつも彼女を待たせているんだろう」
青木「はい、彼女に待つ時間がムダだと叱られます」
武上「では今野くん、手戻りを説明してくれ」
今野「手戻りとは、進んだ工程をいったん元に戻すことです。例えば、型枠に埋設配管を入れないといけないのに入れ忘れ、型枠をいったん解体する。足場を解体したあとに塗装忘れに気づき、再度足場を組み直す。お客様から埋め戻す前に確認したいと言われていたのに先に埋めてしまい、再度掘り返す。これらを手戻りと言います」
武上「そんなにスムーズに事例が出るということは、かなり前科があるな」
今野「はい、実は。。。」
武上「気をつけろよ。では青木くん、手直しを説明してくれ」
青木「手直しとは、建設物が図面どおり、基準どおりできなかったため、取り壊して再度作り直すことです。寸法や位置が違って取り壊し再度作り直す。塗装厚が不足していたため塗り直す。据え付けた器具の品番が違ったので取り外して再度付け直す。これらを手直しと言います」
武上「そのとおりだ。手すき、手待ち、手戻り、手直しが発生すると余分なお金と時間がかかってしまう。では今野くん、これらのムダが発生しないようにするには、どうすればよいと思う?」
今野「まずは報連相が大事だと思います。報告、連絡、相談を緻密にしていると、それらのムダが発生しません」
青木「まめにコミュニケーションを取るということですね」
今野「青木くんは女性にはまめだね」
青木「まめにしていると、関係がうまくいくんですよ」
今野「さらに5Sといわれる整理、整頓、清掃、清潔、躾もムダをなくすために重要だと思います。青木くんの机の上は乱雑で欲しい資料がなかなかでてこないな」
青木「はい、報連相は得意なのですが、整理、整頓は苦手なのです。車も乱雑なので、いつもデートに遅れるんです。気をつけます」
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マイルストーンで改善せよ
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武上「では次に原価低減4つめのポイントの話をしよう。登山道を歩いていると、ペースが遅れているのか、早すぎるのかが不安になるものだ。そして、もしも遅れているようだと、改善策を立てなければ予定通りゴールにたどり着かない。そこで4つ目のポイントは「マイルストーンで改善せよ」だ。マイルストーンとは、日本語では一里塚、山登りだと一合目、二合目などという。当初計画とのずれを中間地点でチェックし、この後の歩み方を見直すことだ」
今野「東海道五十三次には一里塚があって、歩く速さの調整をしていたと聞いたことがあります」
武上「一里とは4kmだ。歩くとちょうど1時間かかる距離だ。一里塚と一里塚の間を1時間かかって歩くとちょうどいい速さだ。しかし、もしも1時間15分かかればちょっとペースを速めないといけないし、もしも45分かかれば早すぎて、後でばてるかもしれないのでペースを遅くする。このように歩く速さを微調整しながら予定どおりゴールに着けるようにするんだ。これを原価管理にあてはめるとどのように考えればよいと思う?」
今野「
青木「出来高ってどのように計算するのですか」
今野「出来高は、その1ヶ月にできあがった工事に予算単価をかけたものだ。例えばコンクリートを10㎥打設し、その単価が15,000円であれば、10㎥×15,000円=15万円になる。一方、実際はコンクリートが設計よりも食い込んで11㎥打設したのなら、支払金額は、11㎥×15,000円=16万5千円となる。1時間で歩かなければならないところを1時間6分かかってしまったようなものだ。そのままだと、予算オーバーとなってしまうので、その後の工事で原価を下げて、全体工事費を守らないといけない」
青木「彼女とのランチの予算が2,000円、プレゼントの予算が4,000円だったところ、2,500円のランチを食べてしまったので、プレゼントの予算を3,500円にするようなものですね」
今野「総予算は6,000円で変わらないけど、彼女へのプレゼントの質が落ちたらダメだよ」
青木「なるほど。当初考えていた4,000円のものと同じものが3,500円で買えるようお店を選んだり中身を工夫したりしないといけないのですね」
今野「そうだ。予算を下げても質が下がっているようだと原価低減でなく、原価削減だ。安かろう、悪かろうではお客様の信頼をなくすので気をつけよう」
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原価を下げるためには、現場のムダをなくさないといけない。
報連相や5Sを徹底することで、手すき、手待ち、手戻り、手直しをなくす。
次に、中間チェックをすることで、途中で予算オーバーしたとしても、その後、施工方法を改善して最終的な予算を厳守することが重要だ。

降籏 達生 ふるはた たつお
建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。