今すぐできる原価低減【vol.1】山頂の旗に向かって、新たな道を歩けば早く登れる

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上昇グラフ図建設会社が業績を向上させるには、原価を下げないといけない。
しかし多くの施工管理技術者は、協力会社への支払い金額を無理矢理下げることが、もっとも効果的な原価低減手法だと勘違いをしている。

原価低減にはセオリーがあり、それを着実に実施することで原価を下げることができるのだ。
原価低減の1回目は原価低減5つのポイントのうち、計画段階である1つめと2つめのポイントについて解説しよう。

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登場人物:
地場建設会社 昭平建設
・青木 建一 現場担当 25歳
・今野 真一 係長 30歳
・武上 幸一郎 工事課長 40歳
・岩下 厳五郎 工事部長 50歳
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旗を立てよ

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岩下「工事部門業績を上げるために原価を下げないといけない。みんなは原価を下げるためにはどのようなことを最優先で考える必要があると思うかい?」
今野「業者との交渉をうまくやって安く発注することだと思います」
青木「資材をできるだけ安く買うことでしょうか」

 

岩下「そのようなことも重要だが、それでは相手任せになってしまう。またともすれば下請いじめにもつながりかねない。武上課長、原価低減5つのポイントを説明してください」

 

武上「わかりました。コスト管理を山登りに例えて考えてみよう。これまで3時間で昇っていた山を、2時間50分で登ることができれば、10分間原価低減できたと仮定する。つまり,より早く山頂に登ることのできるための方策が原価低減策につながるのだ」
青木「なるほど。どうすれば早く山登りができるかを考えればいいのですね」

 

考える施工管理武上「ポイントは5つある。「旗を立てよ」「行き方を変えよ」「ムダを省け」「マイルストーンで改善せよ」「来た道を振り返れ」だ。1番目のポイント「旗を立てよ」から話そう。山頂に旗を立てて、登山者から見えるようにすることだ。そのことで目標が明確になるし、登る方向を誤ることもなくなる。目指すべき山頂が見えているうちは安心だが,雲がかかって山頂が見えなくなると不安になる。どんなに旗が遠くても,旗さえみえればモチベーション高く取り組むことができる。反対に,どんなに旗が近くても,旗が見えないとモチベーションが下がってしまう」

 

青木「ゴルフでピンが見えているホールの方がいいスコアがでるようなものですね」
武上「そうだ。ピンが見えるとやる気にもなるし打つ方向も間違わないな」
今野「青木君は、ピンに向かって打ってもボールが曲がるじゃないか」
青木「そういわないでくださいよ」

 

武上「原価低減に当てはめると、明確な実行予算を、施工前に立てることだ。」
今野「しかし現実には、着工後に予算を立てることがあります。すぐに着工せよとお客様に言われたり、協力会社が見積りを出してこないときです」
武上「そういう工事は利益が出ないこと多いぞ。いくら金額が低い工事でも、発注から着工までの期間がなくても、やったことのない工種でいくらかかるか皆目見当がつかないときでも、予算を立ててから施工しないといけない」

 

今野「彼女の態度がはっきりしないときに、結婚までのスケジュールを決めてしまえば、結婚してしまえるような感じですね」
青木「今野さんはそのやり方で、美人の奥さんをもらったのですか」
今野「そうだよ。また青木くんに詳しく教えてあげるよ」
武上「君らの話はすぐに脱線するな」
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行き先を変えよ

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山頂への道武上「次に,山頂に向かって歩むべき道順を決めなければならない。そこには,すでに登山道があることだろう。しかし,その道を歩いているだけでは、通常3時間かかる道のりを2時間50分に短縮することはできても、2時間にまで短縮することはできないだろう。そこで2つ目のポイントは「行き方を変えよ」である。これまで通ってきた登山道ではない新たな道を、木を切り、雑草をかき分け、沢を渡り、崖をよじ登りながら、山頂の旗を目指すのだ」

 

青木「まったく異なる道を歩くということは、まったく異なる方法で施工することを考えるということですね」
武上「登山道は別名獣道とも呼ばれる。その昔、鹿やイノシシがうろうろと歩いた道だ。その道が草や木がなく歩きやすいものだから他の獣も歩くようになり、ついにそこを人も歩いた。つまり合理的にできた道でないのだ。しかしいったんできてしまうとみんなその道を疑いもせず歩いてしまう。自ら木や雑草をかき分けながら、少しでも早く登ることのできる新たな道を探りながら山頂の旗を目指さなければ飛躍的に早く登ることはできない」
青木「僕は登山が趣味なのでよくわかります」
武上「例えば現場打ちU字溝構造物を工場生産のプレキャストに変えたり、枠組み足場を組まずに高所作業車で作業するなどの方法で、これまでとは異なる方法を考え出すことで原価を大幅に下げることができる。これをVE手法ともいうぞ」

 

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原価を下げるために最初にすべきことは、自ら工夫、努力していかにしてよいものを早く、安く作る事ができるかを考えることだ。
そのために、まずは山頂に旗を立て目標を分かりやすくすること。そして、これまでとは違う道を探し出し、新たな設計、施工方法を考え出すことが重要だ。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。