(1)若手技術社員の育成手法 【vol.2】プラスの要因、マイナスの要因
建設会社の若手技術者を育て、戦力化するために、会社はどうあるべきか。
若手技術者の育成にとってプラスの要因、マイナスの要因という側面から考えてみよう。
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登場人物:
地場建設会社 昭平建設
・青木 建一 現場担当 25歳
・今野 真一 係長 30歳
・岩下 厳五郎 部長 50歳
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待遇を継続して改善する
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青木建一は、休日に大学の同級生に会っていた。
「建一の働く建設業界って待遇はいいのか」
「給料かい」
「給料に加えて、休日の取りやすさや残業の多さだよ」
「給料は他の会社の人のことを知らないのでなんとも言えないけれど、特に不満はないよ。
ただ建設業は自然を相手に仕事をしているので、雨降りが続くと休日出勤があるし、工事の終盤には残業が多くなるね」
建一は、同級生の気安さから正直に話した。
実際に雨が降るとコンクリート工事や土をもり立てる仕事などができなくなるため、その分を休日出勤でカバーせざるを得ないことがある。
また工事の最盛期には、図面を書いたり、予算を作ったりとどうしても残業せざるを得ないことがある。
「それはたいへんな仕事だね」
という友人の言葉に建一は、
「実際にたいへんなことがあるけれど、工事が完成してお客様に喜んでいただくとその苦労は吹き飛ぶよ。
先日もお客様からお礼状をいただき感動したんだ」
と話した。
「しかも会社はそのことをよく考えてくれており、振替休暇を取りやすくしたり、誕生日休暇などの有給休暇も取れるようになっている。
毎年少しずつ改善してくれているよ」
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建一がいうように自然相手の建設業界は、給料、休日、残業などの待遇が他の業界に比べて劣る場合がある。
重要なことは、その状況を毎年少しずつ改善することだ。
改善の姿勢があることで、社員、とりわけ若手社員は安心して働けるものだ。
安心で安定している職場環境
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建一の職場は毎日朝礼がある。
今野真一係長が司会進行をして、その日の業務内容の確認と注意事項の指示がある。
「青木君、今日は午前中測量、午後からは出来高調書を作成して欲しい。測量の手順は、測量作業手順書をよく読んで実施すること。出来高調書の作成は、昨年度の同種工事の書類が倉庫にあるので、よく読んでやって欲しい」
「わかりました」
今野係長の指示は明確で、かつ見本やマニュアルが提示されるので安心して業務ができる。
「俺も早く仕事を覚えて、手順書を見なくても仕事ができるようになるぞ」
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毎日行う業務を一つひとつ上司に確認しなければ仕事が進められないと、若手社員も上司もストレスがたまるものだ。
その日の作業が手順書などで明確になっており、自分で考えながら進められるような状態になっていると、若手社員は安心して働くことができる。
安心して働くことのできる職場環境ではやる気が増すものだ。
会社が安全基地となる
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建一は、最近ある工事を任せられた。
仮設桟橋の設計、計画、施工を行う業務だ。
学生時代に設計をしたことがあったものの、それが実際にできあがり、その上を車が走るとなると不安でいっぱいだった。
そんなとき岩下厳五郎部長は私の席の後ろに立って
「青木君、大丈夫か」
と肩をもみながら言う。
「はい、なんとかできそうです」
「あんまり無理するなよ」
といいながら
「なんとか、明日朝までには図面を仕上げてくれよ」
という。
工事が終わりいよいよあす、施工した仮設桟橋の上を車が走るという日の夜、どうしても寝付けない。目をつぶると仮設桟橋が落ちる夢をみるのだ。
夜の3時に慌てて起きて設計計算をやり直していると、岩下部長も起きてきた。
「だいじょうぶだ。もしものことがあっても私が責任を持つから、思い切ってやれ」
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冒険遊びや高いところから飛び降りるなどの危険な遊びをする子どもの特徴は、家庭が温かいことだ。
もしも迷子になっても、けがをしても、お父さん、お母さんがきっと助けに来てくれる、という安心感があればこそ冒険や危険なことができるものだ。
このような温かい家庭を「安全基地(セキュアベース)」という。
逆に家庭が不安定だと、子どもは心配で冒険をしたり危険なことはせず、家でじっとして遊ぶようになる。
これは会社でも同じ。
現場のミスを本社がカバーしてくれず、責任をすべて現場に負わせるような会社の現場では、チャレンジすることができず、現場に活気がなくなる。
本社や支店が現場で働く人達を温かく見守っているような会社では、現場の人達は安心して工事を進めることができ、経験の少ない人に任せたり、時には新工法にチャレンジすることもできる。
降籏 達生 ふるはた たつお
建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。