耐震改修促進法による耐震診断義務付け~必ず来る大地震への対策~
2015年07月10日
建築物の地震に対する安全性向上の一層の促進を図るために、平成25年に耐震改修促進法が改正されました。
地震の被害と建築基準法の変遷
我が国は、過去から多くの大地震に見舞われてきました。
そして、地震被害を教訓として耐震技術を高め、建築基準法も改正を重ねてきました(図表-1)。
出典:一般社団法人 日本建築防災協会「耐震改修促進法の改正の概要」
平成7年の阪神淡路大震災でも、旧耐震基準である昭和56年以前に建築された建物に多くの被害が発生しています(図表-2)。
出典:一般社団法人 日本建築防災協会「耐震改修促進法の改正の概要」
耐震改修の必要性
阪神淡路大震災では、死亡した方の約8割は、建物の下敷きとなったことが原因でした。
その後、国や自治体は、建物の耐震改修を進めようとしてきましたが、遅々とした状態です。
これには、以下のような理由が挙げられます。
・いつ起こるか分からない地震に対する投資は決断しにくい
・リフォームでは耐震改修より、設備や水廻りなどの改修が優先されやすい
・古い住宅に住む高齢者は耐震改修に投資する余裕が少ない
しかし、地震で建物が倒壊すると、その建物住人だけでなく、避難道路の閉鎖や火災の発生など、周辺にも大きな影響が及びます。
耐震改修促進法とは
耐震改修促進法は、阪神大震災の被害状況を受けて平成7年に施行されました。
旧耐震基準で建てられた建物のうち、多数の人が利用する学校、病院、百貨店等で一定規模以上の特定建物の所有者に耐震診断や耐震補強などが努力義務として課せられました。
そして、平成18年の改正では、特定建築物に「道路閉塞建物(図表-3)」が加わるなど、対象範囲が拡大されました。
出典:東京都「東京都耐震ポータルサイト」
また、各種支援措置が盛り込まれました。
住宅と特定建築物の耐震化率を平成27年までに90%に引き上げるという耐震化の数値目標も定められました。
平成25年の耐震改修促進法改正
しかし、その後も耐震改修はあまり進まず、平成20年時点で、住宅と特定建築物の耐震化は8割程度にとどまっていました。
そこで、平成25年の改正が行われたのです。
戸建住宅などの小規模建物を含む全ての旧耐震基準建築物が、改修努力義務の対象となりました。
そして、多数の不特定者が利用する大規模な建物については、耐震診断が義務化されました。
病院、店舗、旅館等の建築物及び学校、老人ホーム等の避難に配慮を必要とする建築物のうち大規模なものは耐震診断を行い、その結果が公表されることになっています。
また、耐震改修を円滑に行うために、耐震改修で安全性が確保される場合は、容積率や建ぺい率の特例措置がとれるようになりました。
マンションなどの区分所有建築物では、大規模な耐震改修を行う場合の決議要件が3/4以上から1/2超に緩和されました。
必ず来る大地震
近年、東海地震や首都圏直下での巨大地震の高い可能性が指摘されています。
そして、想定される最大規模で地震が発生した場合は、東日本大震災を超える被害が確実視されています。
特に、東海地震の発生源である南海トラフでは、過去100年から150年おきに岩盤のずれによりマグニチュード8クラスの巨大地震が繰り返し起きています。
ここ150年ほど、岩盤がずれておらず、ひずみが溜まった状態であるため「東海地震はいつ起こってもおかしくない」と言われ、対策が急がれています(図表-4)。
出典:気象庁「東海地震発生の切迫性」