技術開発で進む建設作業負荷の軽減 ~作業服が筋肉の代わりになる~
2015年05月22日
建設業界では作業者の高齢化と若年労働者の不足が進んでいます。
労働者の負担軽減、生産性の向上、労働災害リスクを回避する方法として、ロボット技術に期待が集まっています。
作業負荷を40%軽減できるパワーアシストスーツ
パワーアシストスーツとは、電動アクチュエータや人工筋肉などの動力が組み込まれたスーツ(装着具)です。
体に装着することで、これらの動力が人の動きを補助してくれます。
建設業界だけでなく介護支援、リハビリ支援、作業支援、救助支援などでも実用化が進んでいます。
建設会社の導入例
大林組は、平成26年10月からサイバーダイン社のパワーアシストスーツ「HAL」を試験的に導入しています。
このスーツは、体を動かそうとする時に皮膚の表面に流れる微弱な電流を検出して、作業者が考える動作をアシストしてくれます。
体に装着した器具がモーターで動くため、数キロを持ち上げる感覚で数十キロを持ち上げることができます。
そのため、重たい物を持った時の腰にかかる負荷を最大で40%軽減することができるのです。
また、立ったり歩いたりする動作を補助することもできます。
本体は3キロと軽量ですから、装着したまま長時間の作業も可能です。
レンタル価格は1カ月当たり1台12万~14万円です。
大林組では、中腰で同じ姿勢が長時間続く作業や重たい物を運ぶ作業などに活用して、作業負荷の軽減や生産性の向上につながることを期待しています。
体に優しい空気圧方式のパワーアシストスーツ
センサーが筋肉の硬さから体の動きを感知し、肘、腰、膝に取り付けたエアバッグが膨らんだり縮んだりして、各部位の曲げ伸ばしを補助するスーツもあります。
このスーツを着用すると、女性でも体重80キロの男性を抱えあげることができます。
モーター方式のスーツでは、身に着けている時に動力が切れると、体が機械に拘束され、自由に動かせなくなることがありますが、空気圧を利用する方式では動力が切れても、装置そのものが体の動きを強く拘束することがありません。
通常の装着感も体になじみ、柔らかなのが特徴です。
ウェアによる作業アシスト
スポーツの世界では、着るだけで疲労の軽減効果があるウェアの利用が広がっています。
プロ選手から一般にも広まり、普段から愛用する人もいます。
「職人DARWING(ダーウィン)」は、このような技術を活用した建設作業者向けの疲労軽減ウェアです。
竹中工務店がダイヤ工業株式会社と共同で開発しました。
建設作業者が行っている作業動作や日常的に疲労や痛みを感じる箇所を調べてサポートすべき作業姿勢や筋肉部位を特定しました。
そして、ウェアのスパッツ機能によって建設業特有の筋肉の動きをサポートします。
このサポート効果が疲労軽減に寄与するのです。
これまでは、慢性的な腰痛などに対してサポーターやコルセット類を装着することが一般的でしたが、これからは、このようなウェアの着用が広がると考えられます。
このような技術開発は、これからの人手による作業の概念を大きく変える可能性があります。
用語解説
■電動アクチュエータ
アクチュエータとは、入力されたエネルギーを物理運動量に変換するものです。
電動の場合は、モーターの動作によって伸縮・屈伸・旋回などの運動をする装置ということになります。
筋肉も化学エネルギーを利用したアクチュエータの一種といえます。
■人工筋肉
アクチュエータの一種です。高分子を使ったもの、空気圧を使ったもの、電気・磁気をつかったものなどがあります。