3Dプリンターで建物を印刷~次世代の建築工法~
2014年11月02日
3Dプリンターはここ1~2年の間に、身近な道具になってきました。巨大な3Dプリンターを使って建物を建てる実験が始まっています。
3Dプリンターとは、通常の紙に平面的に印刷するプリンターに対して、3Dデータを元に立体を造形する機器を言います。
次世代の建築方法
3Dプリンターで建物を建てることができれば、これまで工場や建設現場で行われていた「切る」「削る」といった作業が無くなり、現場では組み立てるだけになります。つまり、廃棄する材料が発生せず、工場から施工現場に運び込む材料の種類も大幅に減らすことができます。
低コストで短納期、安全で環境への負荷も少なく、そして運搬と施工管理の問題も解決する、との期待が高まっています。災害時の仮設住宅建設や開発途上国の居住問題を解決できる可能性もあります。
活用が始まっている建築模型分野
3Dプリンターの低価格化が進み、建築模型の分野で3Dプリンターの導入が始まっています。
これまで、建築模型は、紙やプラスチックのシートを切り貼りして組み立てていましたが、3Dプリンターでは、設計者のつくる3次元データを活用して短時間で建築模型を造ることができるようになりました。
CADで設計したデータ通りに作製しますから、内部の間取りや家具も、複雑な曲面であっても正確に再現することができます。また、設計の変更による模型の作り直しもデータを変更するだけで行うことができます。
3Dプリンターで石膏の粉末に接着剤とインクを噴きつけ、固めながら着色します。
0.1mm程度の層を積み重ねて立体にしていくことで、紙やプラスチックでは表現できない重厚感のある仕上がりになります。
3Dプリンターでの実物建築
海外では、巨大な3Dプリンターで実物大の住宅を造る計画や実験が進んでいます。
南カリフォルニア大学では、3Dプリンターでコンクリートの層を重ねて建物を建てる技術を開発しています。ノズルから、固まる前の生コンクリートを吹き出して数cmの厚さで積み重ね、壁をつくります。中国の民間企業は、3Dプリンターで1日に10棟の家を建てたと報告しています。
建物全体を一気につくるのでなくても、パーツを作ることは比較的早く実用化されそうです。
複雑で曲線的な形状も思いのままに表現することができるため、施工上の制約から実現できなかった、デザインも現実化する可能性があります。使用できる素材や形状などもこれまでの常識にとらわれない無限の可能性が広がります。
建設用3Dプリンター実用化の影響
土木分野では、数値地図と航空写真を元にして3Dマップを作製する試みが行われています。実際の地形をリアルに模型化することにより、様々な視点や角度から斜面の状態や土石流の可能性などを検討することができます。
フィルムカメラがデジカメに置き換わったような大きな転換が建設業界でも起こる可能性を秘めています。
気にいった建物のデータを取り込んで簡単に印刷できる、そんな時代がくるかもしれません。
用語解説「数値地図」
国土の全域を覆うデジタル形式の情報です。標高データなどの総合的な地理空間情報が含まれています。