古紙利用の重要性が高まる紙パルププラント
2013年11月07日
紙パルププラントでは、新聞用紙・印刷用紙、段ボール原紙・クラフト紙、トイレットペーパー・ティシュ等を生産しています。紙用途の多様化と活用度の高まり、原料確保の観点から、古紙利用の重要性が増してきています。
紙の歴史
最初の紙は包装用として発明されました。その後、筆記可能な紙が開発され、パピルスや羊皮紙またはシュロ・木簡・貝葉などに代わって情報の記録・伝達を担う媒体となりました。
現在の紙の原型は、紀元前2世紀ごろ中国で発明されたといわれています。日本では和紙の技術確立とともに発展し、江戸時代には襖や和傘、提灯・扇子など建築・工芸材料にも用途が広がりました。日本で最初の製紙会社は明治7年に創業しています。
2011年の世界の紙・板紙生産量は、約4億トンです。中国が9,930万トンで世界1位。2位は7,508万トンの米国、3位は2,663万トンの日本となっています。
出典:日本製紙連合会
紙の種類
紙は、新聞、雑誌、印刷用紙、コピー用紙、包装用紙、ノート、ティッシュペーパー等の「紙」と、段ボール、紙箱等の「板紙」に分類されます。
また、「パルプ」は、主に製紙に用いるために分離した植物繊維です。現在は、木材を原料としてパルプを製造します。
紙パルププラントの製造工程
紙パルププラントの製造工程は、(1)木材パルプ製造、(2)古紙パルプ製造、(3)抄紙・塗工・仕上に分かれます。
(1) 木材パルプ製造
まず、木材チップを蒸解釜に入れ、薬品を加えて高温・高圧で煮込むことにより、樹脂(リグニン)を溶かし繊維分(パルプ)を取出します。
次に、パルプ中の異物をスクリーン・洗浄器を通して除去し、洗浄します。そして、薬品で漂白して、木材パルプとなります。
(2)古紙パルプ製造
まず、回収した古紙をパルパーと呼ばれる設備で緩やかにほぐします。ほぐすときの攪拌力で、金属やフィルム、粘着性樹脂やインキが剥離します。次に、かゆ状になった古紙に含まれている大きな異物を除去します。
そして、界面活性剤などの薬品を利用して、印刷インキ、コピートナーなどを分離・除去します。さらに用途に応じて漂白処理を行い、脱水・乾燥して紙原料の古紙パルプができます。
(3)抄紙・塗工・仕上
これらのパルプを、回転する2枚のディスクの間を通すことで、毛ば立たせ、繊維同士が絡みやすくします。
次に、かゆ状のパルプを網の上に均一に吹き出して脱水し、シートを作ります。さらに、フェルトに乗せてプレスロールで挟んで水分をしぼり取ってから乾燥させます。乾燥は、加熱した鉄のシリンダーに押し付けて行います。
その後、塗装・乾燥を行って、印刷できるようにするための下地を作ります。さらに、硬いロールとやわらかいロールの間に紙を通し、表面をなめらかにして光沢を出します。最後に、大きなロール状の紙を、使いやすいように小さくしたり、四角い紙に切断します。
古紙の利用
日本の紙パルププラントの古紙利用率は、板紙では92%を上回り、紙でも40%を超えています。両方では約60%に達し、世界でもトップクラスとなっています。
出典:日本製紙連合会
古紙利用率の向上には、(1)製紙原料の安定的供給の確保、(2)省エネ、地球温暖化防止への貢献、(3)資源の有効利用、ゴミ減量化による循環型社会の形成、など、の社会的に重要な意義があります。
そこで、日本製紙連合会では「2015年度までに古紙利用率64%の目標達成に努める」という努力目標を掲げています。古紙は回収量、ルート、紙の種類、分別状態などによってその供給能力や品質・利用用途・価格などが大きく左右されます。より適切な古紙の回収や古紙処理の方法を探ることが今後も重要な課題となっています。