「ちきゅう」の断層掘削試料で南海トラフ地震での断層すべり量を評価

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「ちきゅう」の断層掘削試料で南海トラフ地震での断層すべり量を評価

2016年06月24日 18:45

世界初、海溝付近の断層すべり量が明らかに

清水建設・技術研究所の津田健一博士も参加する大阪大学大学院理学研究科の廣野哲朗准教授らの研究グループは、統合国際深海掘削計画における、地球深部探査船「ちきゅう」の研究航海で得られた断層掘削試料を用いて、断層の鉱物組成と各種物理特性を分析し、海溝付近の断層のすべり量を解析した。

東日本大震災を引き起こした「日本海溝のプレート境界断層」の試料から同震災で観測された滑量とほぼ同じ、約80メートルの巨大滑りを再現し、同解析手法の有効性を確認した。

また、南海トラフの断層試料から、海溝付近のすべり量は30から50メートル程度になる可能性が、世界で初めて明らかになった。

研究の背景

2011年「東北地方太平洋沖地震」では、海溝付近のプレート境界が大規模に滑り、巨大津波が発生した。

これまでプレート境界断層浅部は地震性滑りを起こさない領域とされてきたため、地球深部探査船による第343次研究航海が2012年による原因調査を実施。その結果、プレート境界断層は低い強度および低い浸透性をもつ粘土鉱物を多く含み、これが巨大滑りを誘発したとされた。

一方、南海トラフにおける海溝型巨大地震は約100から150年の間隔で繰り返され、沿岸域は津波の被害をうけてきた。地震・津波発生過程を明らかにすべく、2007年より南海トラフ地震発生帯掘削計画が開始され、第314-316次研究航海では、南海トラフのプレート境界断層と巨大分岐断層の断層試料の回収に成功していた。

断層試料の分析・解析方法

研究では、まず日本海溝の断層と南海トラフの断層試料の各種物理特性を測定。地震時の断層滑り挙動の数値解析を実施。

さらに、数値解析を日本海溝および南海トラフの断層にて海底下1から10キロメートルの条件で1キロメートルごとに実施し、各深度におけるせん断応力の変化を定量的に評価。

この変化特性を摩擦滑り構成則で規格化し、動力学解析を実施し、海溝付近の断層すべり量の定量的な評価を可能にした。

研究成果の要点

地球深部探査船「ちきゅう」により採取された日本海溝と南海トラフのプレート境界断層試料を分析、モデル計算の結果、2011年東北地方太平洋沖地震での海溝付近の巨大滑約80メートルを再現、さらに南海トラフ地震にて海溝付近の断層が、約30から50メートル滑る可能性を示唆。

日本海溝の泥質な断層では透水率が低く、南海トラフの砂質な断層では摩擦係数が高く温度上昇。そのためサーマルプレッシャライゼーションが強く機能し大きく滑ることを、初めて定量的に評価。

これまで、断層試料の分析結果から、地震時に断層がどの程度滑るのかを定量的に予測することは、不可能だった。今後、地球深部探査船でより深く掘削し、採取した断層試料を本手法で解析することで、将来の発生が危惧される南海トラフ地震において、深部固着域の断層滑の規模をより正確に評価できることが期待される。

同研究成果は、英国Nature Publishing Groupの「Scientific Reports」に、日本時間6月20日(月)18時にオンライン公開される。

(画像はプレスリリースより)

▼外部リンク

 

清水建設 プレスリリース
http://www.shimz.co.jp/

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