理化学研究所は5月31日、シビレエイを使った発電機を開発したと発表した。触ると感電するほど強い発電機能を持つシビレエイの発電器官を使った、新たな発電システムである。
現在、クリーンエネルギーの開発が盛んに行われているが、そのなかでも生物機能を利用した発電法に注目が集まっている。しかし、火力発電など従来の発電方法に比べて、発電出力が極めて低いという課題があった。
今回、新たに開発された発電機は、生命システム研究センター集積バイオデバイス研究ユニットの田中陽ユニットリーダーらの共同研究グループによるもので、シビレエイの強力な発電機能を利用した画期的な発電システムだ。
シビレエイは、ウマのような大きな動物を感電させるデンキウナギと同様に強い電気を発生する生物である。シビレエイに強力な発電機能が備わっているのは、ATP(アデノシン三リン酸)をイオン輸送エネルギーに変換する「電気器官」と、その制御を行う「神経系」の働きによるものだ。
研究グループは、この働きを人工的に再現・制御できれば、画期的な発電方法になりうると考え、研究を進めてきた。
まず、シビレエイ生体に刺激を与えたところ、ピーク電圧19V、電流8A、10ミリ秒以下のパルス電流が測定できた。またパルス電流を利用して、LEDの点灯や蓄電ができることも確認した。
次に、シビレエイの個体から電気器官を取り出し、神経伝達物質をシリンジ針で注入したところ、ピーク電圧91mV、ピーク電流0.25mA、1分以上の継続電流が測定された。
さらにシリンジ針の数を増やすと、ピーク電圧1.5V、ピーク電流0.64mAを達成。発電は繰り返し行えること、発電機能は最大で1日程度保てることも明らかになった。
最後に、シビレエイの電気器官を3cm角にカットし、電極をつないだ発電デバイスを作成し、ピーク電圧1.5V、ピーク電流0.25mAの発電を実現。蓄電が可能であることも確認した。
この研究は、ATP(アデノシン三リン酸)エネルギーのみで発電が可能であることを示しており、高効率発電機に向けた第一歩として期待される。研究成果は英国の科学雑誌『Scientific Reports』(5月31日付け)に掲載された。
(画像はプレスリリースより)
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国立研究開発法人理化学研究所のプレスリリース
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