株式会社大林組は、山岳トンネル掘削工事において、路盤下の地山の隆起を計測する「インバート変位計」を開発。東九州道椿山トンネル新設工事と新名神高速道路野登トンネル西工事に導入した。
地質が不良な地山では、トンネルへの外圧が上部のアーチ部分以外に、インバート部と呼ばれるトンネル底部からも作用し、路盤部が隆起する現象が起こる。
このため年間数mm程度の隆起が長期間にわたり累積し、鉄道や道路トンネルで、車両の走行に支障を来す事例も発生している。これを防ぐためには、トンネル施工時に路盤の変位を常に計測し、変位が収まらない場合はインバート部にコンクリート補強を行い収束させる必要がある。

外圧によるトンネル内空部分の変位の計測は、水平方向と鉛直方向に基準点を設け、定期的に距離を計測し確認するが、工事中は重機やダンプトラックなどが頻繁に通行するため、路盤に基準点を設けにくく、鉛直方向の変位の確認が困難だった。
そこで、通行車両の影響を受けない路盤下に埋設し、高精度に鉛直方向の変位を計測できる「インバート変位計」を開発した。これにより、工事中に路盤の隆起をモニターし、タイムリーに対策を講じることで、トンネル供用後の路盤隆起を防止することが可能となった。
路盤下に埋設した水圧計を、水で満たしたビニール管で地上の基準水槽と連結。路盤の隆起量を水頭差で自動計測し、通行車両の影響を受けずに隆起をモニターできる。また、隆起量に応じ、LED表示する警報システムにより、隆起レベルを可視化。
水頭差で隆起量を計測するため、地山のわずかな変形にも追従できる。また、0.1mmの高精度で計測できるため長期間の緩やかな隆起の変化も見逃さない。
埋設方法は、地中内部にはあらかじめ保護管のみを設置し、埋め戻し後に計器を挿入する。これにより短時間に設置でき繰り返しの転用が可能だ。
同社は、今回開発した「インバート変位計」を今後も積極的に活用し、安全性の高いインフラの構築に取り組む。
(画像はプレスリリースより)
▼外部リンク
株式会社大林組 プレスリリース
http://www.obayashi.co.jp/