マスコミ各社による文部科学省への取材から、南極で100万年前の氷を採取するため、政府の南極地域観測統合推進本部が新基地の建設を目指していることが明らかになった。日本による新基地の建設は1995年に開設した「ドームふじ基地」以来となり、2020年代前半の完成を目指すという。
同本部が先月まとめた2016年度から6年間の次期実施計画では、地球規模の環境変異を調べるため、南極で100万年前の氷掘削を計画の柱に据えている。
南極の岩盤の上には、降り積もった雪の重みで圧縮された「氷床」が存在する。そこには当時の大気に含まれていたさまざまな物質が閉じ込められており、氷を構成する酸素や水素の同位体の比率を調べることで、過去の気温や二酸化炭素濃度などを知ることができるのだ。
このタイムカプセルのような役割を果たす氷床は、欧州チームが南極で採取した約80万年前のものが最古で、100万年前のものはこれまで採取されたことがない。
同本部では新基地の建設により、人類がこれまで手にしたことのない100万年前の最古の大気を閉じ込めた氷を掘り出し、過去の気候変動の解明と、地球温暖化を予測するのに役立てる考え。
100万年前の氷床は、岩盤に近い深さ約3000メートルに存在すると考えられている。岩盤付近は地球内部の熱が伝わり、氷が溶けやすい環境にあるそうだが、南極内陸にあるドームふじ基地から数十キロ地点は、氷床の底面付近も解けていない可能性が高いという。
このため、同本部では新基地をドームふじ基地よりもさらに南極の内陸部に建設する意向で、古い年代の氷を手に入れるため、氷床の底面までほぼ水平に氷が積み重なっている内陸での掘削を掲げている。
今後、文科省では新基地の建設に向け予算要求などをしていくもようだ。
▼外部リンク
文部科学省(南極地域観測事業)
http://www.mext.go.jp/