東日本大震災の復興事業に加え、安倍政権が進める「アベノミクス」効果、2020年の東京五輪に向けた工事が本格化するのを前に、労務費が高騰を続ける中、建設業界では受注価格の引き上げや人手不足を解消するための動きが目立ってきた。
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全国の建設投資のピークは、バルブ経済下の1992年度で84兆円だったが、2001年に誕生した小泉政権以降、縮減が進み、「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権でさらに減少し、20年間で半減した。
公共工事が減った影響で建設業者が減少したのはもちろんのことだが、工事量減少と賃金下落で建設労働者は業界を去り、1997年に685万人いた建設労働者は、現在では503万人にまで落ち込み、182万人にも減少してしまったのだ。
こうした背景の中、建設業の下請け業者の全国組織とゼネコンは、労務費の高騰などによる受注価格の引き上げを建設業界全体に周知させるため、先月、経団連など30団体に向け「安値発注は請け負わない」との決議文を送り、発注額の引き上げを要請した。経団連もこれを反映した取引を会員企業に要請する方向で検討している。
政府、自民党では、慎重論はあるものの、東京五輪までの時限措置という形で、建設業界の人手不足を、ベトナムなどアジア諸国からの外国人労働者の雇用拡大で補う動きも出てきている。
具体的には、外国人の技能実習期間を現行の3年から5年に延長するほか、従業員の5%程度までとされている企業の実習性受け入れ枠を2~3倍に増やし、実習を終えた外国人技能実習生がいったん帰国した場合でも、再度実習を認めるとする内容だ。14年中にも入国管理の法令改正作業に入る見通しだ。
また、兵庫県と同県の建設業協会などは、官民共同で建設業界の人材を育てるという全国的にも珍しい事業に乗り出した。
建設業の人材不足がインフラの修繕や災害復旧への対応にも直結することから、4月にも「県建設業育成魅力アップ協議会(仮称)」を立ち上げる方針を固め、工業高校の生徒らを対象に県発注の大規模工事の現場見学や、三田建設技能研修センター(三田市)での体験セミナーを実施し、建設業の魅力や役割を知ってもらうなど、人材確保や処遇改善などの情報共有にも努めていく考え。
▼外部リンク
「建設産業専門団体連合会(建専連)」
http://www.kensenren.or.jp/