鹿島は1月16日、タブレットPCを用いた山岳トンネル切羽の「風化変質判定システム」を開発したと発表した。
山岳トンネルの工事では安全性確保と品質管理のために、適切な支保パターンを選定する必要がある。支保の選定の1つである切羽の観察は、崩落の原因となる岩盤の風化を確認するための重要な項目とされいる。
切羽の観察はこれまで、目視で確認されてきた。しかし「風化変質」は数値化しにくいため、判定に個人差があるのが課題だった。
そこで鹿島は、タブレットPC内蔵のカメラで撮影した画像を解析し、数値に変換するシステムを開発。技術者の主観的な判断に頼らず、客観的な数値として誰もが同等に風化変質を判定できるようにした。
(画像はプレスリリースより)
岩盤の風化は、岩石に含まれる鉱物と岩盤内の浸透水が反応し、粘土鉱物が作られることで進行する。粘土鉱物は、茶・黄・白色など、風化以前の鉱物とは異なる色調を示すことが特徴だ。
「風化変質判定システム」は鉱物の色調変化に着目し、カメラで撮影した切羽の色調を、数値化してコンター図で表示する。
デジタルカメラでの撮影は周辺環境に影響されやすい欠点があるが、カラーバーを一緒に撮影することで、色調補正を可能にした。これにより、トンネル内の照明やフラッシュ、撮影者の技量の差に関係なく、同一条件で色調を解析することができる。
解析結果はRGB値から、色調の比較に最適なL*a*b*値に変換後、風化部分の面積比を数値化して出力する。
「風化変質判定システム」を利用すれば、切羽に近づかずに、切羽全体の色調を一度に客観的に測定できる。タブレットPC内蔵のカメラを使用するため、デジタルカメラからPCへ画像データを転送する手間が省け、現地での評価が簡単に行えるようになった。
「風化変質判定システム」は既に、宮崎県・南久保山トンネル新設工事の低土被り部の切羽観察に導入され、実用性が確認されている。
鹿島では今後、山岳トンネル工事に「風化変質判定システム」を積極的に取り入れ、工事の安全性及び品質向上に役立てる方針だ。更にダム堤体基礎岩盤の検査やダム原石山の分類など、他分野への応用も進めていく。
▼外部リンク
鹿島建設株式会社のプレスリリース
http://www.kajima.co.jp/news/press/201401/16c1-j.htm