国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは4月11日、大日本印刷株式会社(DNP)と共同で、橋梁のひずみ分布をモニタリングするセンサーシートを開発した、と発表した。
今回の開発は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトのサブテーマ「フレキシブル面パターンセンサーによる橋梁センシングシステムの開発」の一環として行われた。
近年、橋梁の老朽化は進行しており、その数は増大している。橋梁の点検は、専門作業員が直接目視を基本とするが、専門作業員が不足しているため、点検やその後の経過観察が十分にできていない。
橋梁などのインフラを効率的に維持管理するために、ひずみセンサーを用いてひずみ分布を常時モニタリングし、そのデータを基に、インフラの健全性評価や状態に応じた点検を実施する必要がある。しかし、従来の光ファイバー方式や有線方式では、コスト面や施工面で問題があった。
そこで、産総研集積マイクロシステム研究センターは、DNPと共同で、屋外環境下でも使用可能で施工の容易な、橋梁のひずみ分布をモニタリングするセンサーシートを開発した。
センサーシートは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて、極薄化したシリコンセンサーや回路チップをフレキシブル基板上に集積化した。
そして、フレキシブル基板上に、圧電MEMS技術で作製した極薄PZT/Siひずみセンサー(長さ5mm、幅1mm、厚さ3マイクロm)を配置し、保護フィルム、接着フィルムと一体化したフレキシブル面パターンセンサーを作製した。
フレキシブル面パターンセンサーを阪神高速道路の橋に複数枚貼り付けて実験したところ、橋梁上を車両が通過すると、センサーが橋梁と一体となってひずみ、極薄PZT/Siひずみセンサーがひずみに比例した電圧を出力し、動ひずみ分布を高感度で計測できた。
橋梁に亀裂などの欠陥があると、車両通過時のひずみ分布に異常が現れることを利用して、橋梁の劣化状態をモニタリングできるという。
研究グループは今後、高速道路橋にフレキシブル面パターンセンサーを貼り付けて、ひずみ分布測定と屋外耐久性評価を行うと同時に、補修・補強した橋梁の経過観察の実証試験も行う。
また、今回開発した技術を活用し、信号処理・通信モジュールをフレキシブル基板上に集積化するハイブリッドエレクトロニクス技術の開発を推進し、同時に大判の基板を用いることによる低コスト化についても検討を進めるとのこと。
(画像はプレスリリースより)
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国立研究開発法人産業技術総合研究所のニュースリリース
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