(16)建設技術者のための人脈構築法【Vol.2】筆まめ、メールまめで人脈を築く
人脈を作るためには直接会ったり電話をするだけでなく、手紙やはがき、そしてメールを書くことが有効だ。ただし、文章を書く作法を知らないとかえって逆効果になることもある。
ここでは建設技術者が行うべき手紙、はがき、メールの書き方について考えてみよう。
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登場人物
地場建設会社 昭平建設
青木建一 現場担当 25歳
今野真一 係長 30歳
武上幸一郎 工事課長 40歳
岩下厳五郎 工事部長 50歳
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「筆まめ」で関係を深める
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岩下;今野君は手紙やはがきを書いているかい?
今野;手紙やはがきはほとんど書いていないです。年賀状を書く程度ですね。
青木;僕は恥ずかしいですが、年賀状でさえ書かないです。
岩下;最近は手紙を書くことも、受け取ることもめっきり減ってしまったな。だけど、滅多に受け取らないからこそ、心が伝わるツールが手紙であるもいえる。手紙を書くには手間がかかる。手書きの文字からは人柄も伝わってくる。そういう意味で、手紙というのは人脈をつくるための有効なツールとして活用できるんだ。
青木;どんな時に書けば良いのですか?
岩下;例えば工事が終わるとお客様や近隣住民、そして協力会社にもお礼状を書くのがよいだろう。ほとんどの人は、工事が始まるときにお願い事を伝えるために頻繁に連絡をするのに、工事が終わればそのことのお礼を伝えていない。それでは、あまりに不誠実だ。お礼をしっかり伝えない人のいうことは、そのうち誰も言うことを聞かなくなるぞ。
青木;そのとおりですね。今後はお礼状をしっかり書くようにします。でも書いたことがないので、どのように書けば良いのか、よくわかりません。
武上;手紙は通常は便せんに書くものだが、青木君は「一筆箋」を知っているかい。
青木;「一筆箋」?知りません。
武上;8cm×18cmくらいの大きさの便せんだ。これなら書く量は少なくてすむし、手書きの温かさをしっかりと伝えることもできる。
岩下;一筆箋とはいえ、和紙のものなら筆ペンで書き、洋紙であれば万年筆で書くと、相手に伝わる印象はかなり強くなるぞ。
青木;それくらいだと僕にもできそうです。
岩下;そしてここぞと言うときに、巻紙を使うのが良い。
青木;巻紙って何ですか?
岩下;和紙がくるくると丸めてあるものだ。おそらくほとんどの人は巻紙で手紙を受け取ったことはないだろうから、そのインパクトは強烈だ。とりわけ関係を深めたいときには、巻紙で手紙を書くとよいだろう。
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「メールまめ」で接点を増やす
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岩下;最近はメールでコミュニケーションを取ることが増えてきた。
今野;はい、私は連絡するときは、ほとんどメールで行っています。
武上;頻繁に使うツールだからこそ、作法を守らないといけないぞ。
青木;メールに作法なんてあるんですか?
武上;容易に使えるからこそ、気をつけないといけないことがある。
まずは件名だ。件名に「田中です」「ありがとうございました」などと書く人がいるが,これは問題がある。受け手に用件が伝わらないため開封されない可能性があり,また迷惑メールに間違えられて削除される可能性があるのだ。そのため,件名は「○月○日○○会議の件」「○○資料作成のお願い」「○○のご報告」などと具体的に内容が分かるように書くのが良い。
さらにメールは顔が見えないからこそ,礼儀正しくする必要がある。表情や声が出せないので,その分余計に礼儀に気をつけるのがよい。「いつもお世話になっております」「こんにちは」「ご返信ありがとうございます。」など,特に書き出しには注意が必要だぞ。
青木;そう言われてみると、僕のメールには丁寧さが欠けるように思います。
武上;まだあるぞ。返信が必要なメールには,1件の要件に対して1件のメールを書くのがよい。1件のメールに複数の要件が書いてあると,返信が遅れる原因となってしまうんだ。
さらに画面の横方向に長々と書かれているととても読みにくい文章になる。20~25字ごとに改行するのがよい。さらに,2~5行を1段落として,空白行を入れると読み易くなる。
青木;僕へのメールの返信が遅いのは、そのせいかもしれません。
武上;青木君のいうように、送信したメールの返信が3日こないと人は不安になるものだ。メールが届いていないのか,返信しない理由があるのかなどと思ってしまう。すぐに回答ができない場合でも,「○○日までに回答します」というメールを3日以内に送りたいものだ。
青木;はい、気をつけます。
武上;メールは事務連絡に適しているけれど,タイムリーなメールは,相手との距離を縮めることに有効で人脈構築につながるものだ。「新聞で貴社を拝見しました」「貴社の折込チラシを自宅で受け取りました」「先日○○のことをおっしゃっていましたが,そのことについて○○がわかったので報告します」などと,まめに簡潔なメールを送ることで,相手にとってはとても身近に感じることができる。
メールには写真を添付すると印象に残る。もちろん工事の進捗状況を、写真で伝えると喜ばれるぞ。
青木;これから用のなくてもタイムリーなメールを送るよう心がけます。
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人脈を構築するのに、手紙やはがきといった筆まめはとても有効だ。手間がかかるが、だからこそ、相手との距離をぐっと縮め、かつ深めることができる。
また日常的によく使うメールも、使い方次第では事務的連絡のみならず、人脈構築につながることができる。ちょっとしたコツを体得し、有効活用しよう。
降籏 達生 ふるはた たつお
建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。