(13)工事成績評定を上げる方法【vol.3】ポイント2~4.コミュニケーション

更新1121

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(13)工事成績評定を上げる方法【vol.3】ポイント2~4.コミュニケーション

コミュニケーション引き続き「工事成績評定点」を上げるための7つのポイントを解説している。今回はさらに3つのポイントを解説しよう。この3つはいずれも発注者、協力会社、近隣住民とのコミュニケーションに関わるものだ。

 

いかにしてスムーズなコミュニケーションを取れるかで、工事成績評定点はアップする

 

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登場人物
地場建設会社 昭平建設
青木建一 現場担当 25歳
今野真一 係長 30歳
武上幸一郎 工事課長 40歳
岩下厳五郎 工事部長 50歳
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コミュニケーションの難しさを知る

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武上;発注者、協力会社、社内のコミュニケーションが不十分なために、様々な問題が発生している。その結果、工事成績が下がっていることが多い。
青木;以前教えていただいた、親密力(アプローチ)、調査力(リサーチ)、表現力(プレゼンテーション)、交渉力(クロージング)が重要なのですね。

 

今野;具体的にはどうすればよいのでしょうか。
武上;コミュニケーションの難しさを知ることが重要だ。例えば、こちらの伝えようとしていることは半分くらいしか相手に伝わっていないと知る。そのためには、メールをした後、確認の電話を入れるなどの行動が必要だ。

 

今野;「言った、言わない」というもめ事をなくすためですね。
武上;さらに、相手の言うことを自分が半分くらいしか理解していないと知る。そのため、会合ではホワイトボードなどに相手の言ったことを書き出したり、会合の後では議事録を作成して確認してもらうことが必要だ。

 

今野;私も自分の理解不足が原因でお客様のご要望どおりに施工せず、手戻り作業になったことがあります。
武上;コミュニケーションの難しさを知った上で施工するために、実践すべきことを列挙しよう。

 

 顧客との会議の前に、一緒に現場を巡視し同じ視点で話ができるようにする
 書類はまとめて提出せずにこまめに提出することで、顧客とのコミュニケーションの機会を増やす
 悪い箇所や是正事項は自分から顧客に話して相談する
 検査終了後雑談で見解を聴く
 顧客、作業員いずれもがすぐに目で見てわかる工程表を作成する
 工法説明では、メリットともにデメリットも必ず伝える
 自然災害などの緊急時に、顧客から連絡がくる前に電話をする
 連絡方法は相手の状況を考えて、メール、電話、手紙などの連絡方法を選択する
 メール送信後、電話にて到着確認をする。逆に電話後、メールにてその内容を確認する
 打ち合わせ後、必ず議事録を作成する
 郵便物が届いたら、到着確認の連絡(電話、メール、FAX)を入れる

顧客のニーズとウォンツを先取りする

武上;顧客が欲することをしてこそ高評価になる。だからこそ顧客が何を欲しているのかを先取りして把握し、実行しなければならない
青木;先取りってどういうことですか。

 

武上;顧客対応力には3段階ある。第1段階は顧客に言われたことをやらない人、第2段階は顧客に言われたことはやる人、第3段階は顧客に言われる前に気持ちを察してやる人だ。先取りとは、第3段階の行動を実践する人だ。

 

今野;なるほど、顧客が求めていることは何かという仮設を立てて、それを実行することが大切ですね。
武上;先取りして実践すべきことの事例を以下に紹介しよう。

 

 顧客担当者の技術的要求(共通仕様書を超える要求)を掴み、それに応える施工をする(サッシの通り、仕上げ材の割付、建具枠の位置、天井材の割付、畳の割付、出隅、入隅、実物模型の作成、ICT(情報通信技術)の活用)
 起工時の図面、現地との不整合を確認する
 顧客の用いる用語を多用し、配慮していることを示す(品質管理基準、自社の管理基準、積極的に、イメージアップ、日常管理、創意工夫等)
 安全パトロールは他社の専門家にやっていただく
 100点の書類を期限より遅れて提出するよりも、80点の書類を期限通りに提出する方が良い
 顧客担当者が無知な部分について、特に詳細に写真撮影する(全体写真など)
 検査時間を確保し、技術者全員で対応する
 検査にてよく受ける指摘事項をまとめておく
 検査報告書には予防処置を織り込む
 特殊設備の名称や容量をラミネート加工した看板で表示する(ノッチタンク、測量ポイント、側線名、杭芯位置)
 設備点検を綿密に行う(計画書と配置設備が同じであること、毎日の点検記録、過積載していないことの記録)

住民との対応を強化する

近隣住民への配慮武上;公共工事の場合、税負担をしている住民こそが真の顧客である。しかも近隣住民には、直接の利益がないのに多大な負担を強いられることが多い。公共工事のみならず、近隣配慮は工事をスムーズに進行させるポイントだ。

 

今野;工事成績評定の査定項目には、近隣住民からのクレームに対する減点が大きいですね。
武上;一度でも近隣からのクレームが発注者に届くと80点確保は困難になる。「そこまでやるのか」というくらいに住民対応は強化した方がよい。以下にその事例を紹介しよう。

 

 住民に対するアンケートを実施する。親しくなると苦情が言いにくくなるのでアンケートが有効である
 ガードマン、誘導員に地元の意見を聞いてもらう(散歩している人への声掛け、「ご迷惑おかけしています」の声掛け)
 工事用車両の駐車方法に注意する
 工事用車両の内外を美しく保つ
 時間外の工事用車両の駐車に注意する(ローリー車等)
 騒音の発生しない資材を使用する(金属製→木製)
 騒音計、振動計を設置し数値が見えるようにする
 住民から現場内が見えるように、現場内の見える化を実施する(仮囲いを透明にするなど)
 仮囲いに工程表、工事写真、当日の作業内容などを貼り出す
 無機質な現場から、プランターを置くなど緑ある現場にし、終了後寄贈する
 ホームページに工事の進ちょく状況をアップして誰でも見られるようにする
 現場内5Sの徹底、公園のトイレ掃除、周辺の清掃、雑草除去をする
 1回/月の住民との会合を実施する
 地元のボスと仲良くする
 地域、学区の地域清掃(日曜日)、資源回収、祭りに協力する
 近隣の方々の井戸端会議に参加する
 近隣の方への「新聞」(月刊)、「お知らせ用紙」の作成(ふりがなをつけるとよい)
 区長に「新聞」を回覧してもらう
 近隣の商店で買い物したり、近隣のレストランで食事をする
 端材(例えば人工芝)を地元に提供する
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一歩先んじたコミュニケーションをとることで、工事成績はアップする。逆に言うと常識の範囲内のコミュニケーション手段をしているだけでは、高得点は望めない。「顧客、協力会社、近隣住民のために」、ではなく、「顧客、協力会社、近隣住民の立場に立って」行動するよう心がけよう。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。