(13)工事成績評価を上げる方法【vol.2】ポイント1.改善力

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(13)工事成績評価を上げる方法【vol.2】ポイント1.改善力

分析しているビジネスマン前回は「工事成績評定点」を上げるための7つのポイントを解説した。今回は「ポイント1.【改善力】現状を分析して改善する」について説明しよう。

 

だれでもミスを起こすもの。しかし一度起こしたら二度としない人と、何度も同じミスを繰り返す人の違いは、現状を分析し改善しているかどうかにある。
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登場人物
地場建設会社 昭平建設
青木建一 現場担当 25歳
今野真一 係長 30歳
武上幸一郎 工事課長 40歳
岩下厳五郎 工事部長 50歳
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評価点から逆算して採点結果を算定する

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武上;工事成績評定において、同じミスを繰り返さないようにPDCAサイクルを回すことは重要だ。そのためには何が評価され、何が評価されなかったかを正確に分析しなければならない
青木;何が評価され、何が評価されなかったかということは、どうすればわかるのですか

 

武上;まずは発注者の誰が、どのようにして評価点をつけているかを知ることが大切だ。「工事成績評定実施要領」が国土交通省や各都道府県から発表されているので、それを入手して見てみよう。
青木;インターネットでダウンロードして手元にあります。

 

武上;国土交通省の場合、工事成績は表1のように、3名の担当者がそれぞれの査定項目の採点をするんだ。

 

表1 工事成績評定者一覧
工事成績評定者一覧表
青木;建設事務所に常駐している人に加えて、本庁にいる人も採点するのですね。

 

武上;そうだ。査定項目「施工体制一般」であれば、主任技術評価官が評価する。

 

評定点は
採点式:(●)×0.4+2.9
という計算式で算定する。●は1.0点満点なので、満点の場合は
(1.0)×0.4+2.9=3.30点
となる。
もしも、ある工事において「施工体制一般」の採点結果が3.1点だったとしよう。このときは●に何点がついたかを逆算してみる。
(●)×0.4+2.9=3.1
●は0.5点だということがわかる。

施工当時を思い出して評価されていない項目を抽出する

武上;表2工事成績採点表を確認すると●が0.5点ということはb評価ということがわかる。

 

表2 工事成績採点表
工事成績採点表
さらに評価表には、判断基準の記載がある

 

判断基準
評価値が90%以上・・・・・・・a
評価値が80%以上90%未満・・b
評価値が80%未満・・・・・・c

 

今回b評価だったということは、評価対象項目のうち、80%~90%にチェックが入っているということ。逆に言うと10%~20%のチェック項目には、チェックが入っていないということだ。

 

表3「施工体制一般」の評価対象項目

 

□ 「施工プロセス」のチェックリストのうち、施工体制一般について指示事項が無い。
□ 施工計画書を、工事着手前に提出している。
□ 作業分担の範囲を、施工体制台帳及び施工体系図に明確に記載している。
□ 品質証明員が関係書類、出来形、品質等の確認を工事全般にわたって実施して、品質証明に係る体制が有効に機能している。
□ 元請が下請の作業成果を検査している。
□ 施工計画書の内容と現場施工方法が一致している。
□ 緊急指示、災害、事故等が発生した場合の対応が速やかである。
□ 現場に対する本店や支店による支援体制を整えている。
□ 工場製作期間における技術者を適切に配置している。
□ 機械設備、電気設備等について、製作工場における社内検査体制(規格値の設定や確認方法等)を整えている。

 

この場合11項目の評価項目があるので、2~3箇所の評価項目にチェックが入っていない項目があったということがわかる。

 

青木;なるほど。そうすると現場を担当した私は、どの項目ができていなかったかを確認すれば良いのですね。工事を思い出してチェックをしてみます。

 

☑ 「施工プロセス」のチェックリストのうち、施工体制一般について指示事項が無い。
□ 施工計画書を、工事着手前に提出している。
☑ 作業分担の範囲を、施工体制台帳及び施工体系図に明確に記載している。
☑ 品質証明員が関係書類、出来形、品質等の確認を工事全般にわたって実施して、品質証明に係る体制が有効に機能している。
☑ 元請が下請の作業成果を検査している。
□ 施工計画書の内容と現場施工方法が一致している。
☑ 緊急指示、災害、事故等が発生した場合の対応が速やかである。
☑ 現場に対する本店や支店による支援体制を整えている。
☑ 工場製作期間における技術者を適切に配置している。
☑ 機械設備、電気設備等について、製作工場における社内検査体制(規格値の設定や確認方法等)を整えている。

 

振り返れば、

 

□施工計画書を、工事着手前に提出している。
□施工計画書の内容と現場施工方法が一致している。
の2項目にはチェックが入っていないと思います。施工計画書の提出は遅れましたし、計画書とどおりの施工ができない箇所がありましたから。

再発防止策を考える

考える作業員武上;では今後、同様の工事において同じようなことがないように気をつけないといけないね。下表のようにチェックがつかなかった箇所の原因を調査し、再発しないためにはどうすればよいかを考えるんだ。

 

再発防止策表
青木;僕の経験不足が最大の原因ですので、ベテランの方にフォローしていただけるとミスを防ぐことができると思います。このようにしていただけると本当に助かります。
武上;再発防止策をすべての評価項目について実施することで、同じようなミスを繰り返し起こさないようになるんだ。
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工事成績が出されたら、それを分析し、なぜそのような点になったかを考える。その上で、次に受注する工事ではどのように対応すれば良いかの対策を立てておくことが必要である。これを工事終了の都度行うことで、個人はもちろん、会社全体の施工レベルが着実に上がるようになる。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。