現場代理人の育成手法【vol.1】現場代理人に必要な能力とは

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(2)現場代理人の育成手法【vol.1】現場代理人に必要な能力とは

建設工事は、現場代理人によって、その成果が大きく異なる。

成果を出す現場代理人とミスが多く成果を出せない現場代理人の違いはなんだろうか。

ここではいかにして、成果を出す現場代理人を育成するかについて考えてみよう。

 

1回目となる今回のテーマは「現場代理人に必要な能力」だ。

 

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登場人物:

地場建設会社 昭平建設

・青木 建一 現場担当 25歳

・今野 真一 係長 30歳

・岩下 厳五郎 部長 50歳

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「雑識」を「知識」にする

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今野真一は、入社して8年経ち、現場のことは一通り身につけたつもりだ。

しかし先輩を見ると自分はまだまだだと感じることが多い。

1級土木施工管理技士資格は取得したので、知識はそこそこあると思うが、経験が不十分だと感じている。

経験したことのない工事を担当するとどうすればよいのかわからなくなってしまう。

そこで岩下部長に相談してみた。

 

「岩下部長、私がこれから現場で成果をあげるために、どのようにして能力を向上させれば良いですか」

「まずは「雑識」を「知識」にすることだよ」

「雑識?」

「資格を取得したところで、それを現場で活かせないと「雑識」にすぎない。1級土木施工管理技士試験で勉強したことを覚えているかい」

「いいえ、ほとんど忘れてしまいました」

「学んだことを現場で活かせるように本を読み返したり、書き出したりすることが必要だよ」

「現場でするに活かせるように、情報をまとめておくのですね」

「そうだ。例えばコンクリートを打設しようとして雨が降ってきたとしよう。どの程度の雨であれば打設してもよいのかわかるかい」

「少々の雨ならバキュームやスポンジで吸い取れるので打設しても良いかと思いますが、どの程度と言われると分かりません」

「コンクリート標準示方書(ダムコンクリート編)には時間雨量4mmまでなら打設してもよいと書いてある。このように現場で使えるように仕方書や仕様書の内容が頭に入っていて、すぐに使える状態になっていることを「知識」になっているという。どこかで聞いたことがあるなあ、という状態では知って入るけれど活かせない「雑識」だ」

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現場代理人に必要な能力には「技術力」「コミュニケーション能力」「管理力」の3つだ。

それらを身につけ現場で活かすことができるようになるためには、様々な情報である「雑識」を、読み返したり、書き出したりすることで頭の中で整理して「知識」にしなければならない

「実体験」に「疑似体験」を加える

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「さらに経験を積むことで「見識」を得ることができる。経験とは自分が実際に行った「実体験」と「疑似体験」に分かれる」

「疑似体験?」

「疑似体験」とは、実際には自分で体験していないが、施工検討会や反省会で別の現場のことを「聞く」現場見学会に参加して現場を「見る」、そして書籍から著者の体験を「読む」ことだ」

「なるほど、自分では実際に体験していないけれど人の体験を盗むことですね」

「会社で開催する施工検討会、反省会、現場見学会に参加しているかい」

「はい、よほどのことがない限り参加しています」

「他社の現場でも、きちんとあいさつをして「見学させてください」というと見せてくれることがある。資材置き場や仮設クレーンの配置がどのようになっているか、現場で働く人たちがどのような手順で作業をしているかを見ることで自分の現場を省みることができるね」

「他社の現場は行ったことがないので、一度トライしてみます」

「ちなみに、今野君は本を読んでいるかい」

「学生時代以降、試験勉強以外の本は読んでいません」

「それではダメだ。本から得る知識は無限大だよ」

「でも忙しくて本を読む時間がありません」

「では寝る前にふとんに入ってから1ページ読んでごらん」

「1ページでいいのですか」

「そうすると1年で365ページ、約2冊の本が読める。10年経つと大きな違いがでるぞ」

「わかりました。今晩からやってみます」

「ところで、先程時間雨量4mm以上降るとコンクリート打設してはいけないと言ったが、今降っている雨が時間雨量4mm以上かどうかをどのようにして判断すればいいかわかるかい」

「計測するのですか」

「計測しないでも分かるようにならないといけない。上を向いて目を開けていられると4mm以下、目を開けていられないと4mm以上だよ。こういうことを経験から学ぶことも重要だ」

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「実体験」は人によって大きな差にならないが、「疑似体験」をしているかどうかは個人差が大きい。

施工検討会、反省会、現場見学会、さらには読書の推奨など社員が「疑似体験」を積めるような環境を作ることが、人の成長には欠かせない。

現場で「決断」できることも必要な能力

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「そのようにして身につけた「知識」と「経験」をもとにして、「決断」をする能力を「胆識」という。現場では現場代理人が決断しなければならないことがたくさん起きるんだ。そこから逃げずに「決断」してこそ現場が前に進むんだ」

「なるほど。正確に「決断」するためには「知識」と「経験」が必要なのですね」

「そうだ。知識、経験がないのに「決断」するのは、「決断」でなく「思いつき」だ。正しい「決断」を素早くするためにも、「知識」「経験」を習得しなければならないよ。コンクリートのことでいうと、時間雨量4mm以下であれば打設してもよいと知っていることが「知識」、上を見て目を開けていられると4mm以下だとわかることが「見識」、それらをもとに打設の可否を判断することが「胆識」だ」

「なるほど、よくわかりました。奥深いですね」

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現場代理人にとって「決断」が重要であることは誰もが認めるところ。しかし「思いつき」ばかりでは工事をミスリードしてしまう。かといって「決断しない」ことも問題が大きい。

まずは「決断」ミスを恐れず決めることから始めると良いだろう。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。