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命を守る浄水場

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2012年10月03日

2012年5月、利根川水系から取水する浄水場で基準を上回るホルムアルデヒドが検出され、千葉、埼玉、群馬の3県で取水停止となりました。千葉県では約35万世帯が2日間も断水する騒ぎとなりました。
原因は、埼玉県の化学会社から廃液処理を依頼された群馬県の産廃処理業者が化学物質を流出したことでした。命を守る水の大切さが再認識されました。

浄水場の歴史

 浄水場は、河川の水や地下水などを浄化・消毒して、上水道へ供給する水道施設です。
天正18年(1590年)、徳川家康の江戸入府時に、良質な飲料水を得るために神田上水が造られました。昔から街づくりの第一歩として、何よりもまず飲料水の確保が大切だったのです。承応3年(1654年)には玉川上水が完成し、100万都市江戸の人々の暮らしを支えました。
明治31年(1898年)には淀橋浄水場が通水を開始し、近代水道が始まりました。 コレラの流行などにより近代水道の建設が急がれました。現在、日本には約6千か所の浄水場があります。(表1・表2)
日本の浄水場は、主に県営・市営・町営などの形態ですが、管理運転業務の民間委託が進んでいます。



ふたつのろ過方式

 浄水場のろ過方式には緩速ろ過方式と急速濾過方式があります。
緩速ろ過方式は、砂を敷き詰めたろ過池で微生物の浄化作用を利用して天然の清水をつくるのに近い浄水処理を行います。機械、電気などの付帯設備をほとんど必要としないため、耐用年数は長くなります。砂層の微生物膜の働きで濁りや細菌、藻類、油やアンモニア生窒素、有機物や異臭味、細菌なども除去されます。このように緩速ろ過法では美味しくて安全な水を作ることが出来ます。日本では、戦前までヨーロッパの技術の影響を受け、上水道のほとんどが緩速ろ過法を採用しました。
戦後、我が国の経済が急速に発展成長し、水道水の需要が急増したこと、アメリカの技術に影響されたことから、急速濾過方式の浄水場が多く建設されました。
急速ろ過方式は、原水から、土砂や細かなゴミ等を沈め取り除き、次に擬集剤などの薬品を注入して細かい粒子をかたまりに(凝集)して可能な限り沈殿させます。その上澄水を、砂を敷き詰めたろ過層によってろ過を行い塩素消毒にて浄水処理をする方法です。短時間で効率良く浄水処理を行うことができます。狭い敷地で大量の水を処理できることや、環境の汚染による原水水質の劣化も急速ろ過方式の採用を促進させました。

浄水場のしくみ

 急速濾過方式の浄水場では次のような工程で水をつくります。(図1)
(1)まず、取水施設により、自然環境から「原水」を浄水場に取り入れます。(2)原水に含まれるは砂や土を沈砂池(ちんさち)に導いて沈殿させ、それらを取り除きます。
(3)沈砂池から流れてきた原水を取水ポンプで着水井(ちゃくすいせい)へ送水します。
(4)着水井では、送水されてきた原水の流れを抑えて、以降の過程へ向けて水位を一定に保ちます。
(5)水に混ざっている細かい砂や土などを沈めるため、着水井から出た原水にポリ塩化アルミニウム等の凝集剤を注入します。
(6)凝集剤を加えた原水を、薬品混和池でよく混ぜます。
(7)凝集剤の混ざった原水をゆっくりと攪拌してフロックを形成します。フロックとは、水に浮遊していた細かい砂や土などが、凝集剤の働きで寄り集まりかたまりとなったもので、フロックが作られることで、砂や土などの粒子が比較的大きくなり沈みやすくなります。
(8)沈でん池の静かな流れの中でフロックが沈み、砂や土が水から除かれます。
(9)アンモニア態窒素や鉄などを取るため、沈でん池から出た水に塩素を注入します。
(10)ろ過池の砂や砂利の層で水を濾して、微細な粒子状のものを取り除きます。
(11)消毒のための塩素を入れます。
(12)配水池に、きれいになった水を溜めます。
(13)送水ポンプによって、水は各配水場・配水池へ送られ、各家庭や施設へ給水されます。


有害物質の除去

沈殿やろ過の過程では、固体としての有害な物質は取り除くことができますが、水溶性の有害物質は除去できません。このため生化学的手段や化学処理によって、溶け込んでいる物質を凝固させて取り除きます。さらに、塩素などを使って殺菌します。 しかし、どんな原水でも浄化できるわけではありません。浄水場では、取水時と浄水施設の各段階における水に含まれる化学物質や微生物の監視を絶えず行っています。
 高度浄水処理では、オゾン処理と生物活性炭吸着処理を組み込み、かび臭やカルキ臭を取り除きます。トリハロメタンも減少させます。(図2)


水道技術の海外進出

日本では、水道水が飲めるのが当たり前ですが、蛇口から出る水を直接飲める国は、世界で11か国しかありません。水道は、非常に高度な技術を要するシステムで、日本のノウハウに対して熱い視線が送られています。
海外ではスエズ、ヴェオリアなど水メジャーと呼ばれる巨大企業が水道事業を一括して受注して収益を得ています。しかし我が国の民間企業は素材供給や施設の建設の分野への参入が大部分であり施設の管理・運営分野には参入できていませんでした。日本では長年地方自治体が水道事業を管理・運営してきため民間企業に施設運営のノウハウが蓄積されていなかったためです。また、自治体が海外で収益事業を行うという発想もありませんでした。
総務省では、「地方自治体水道事業の海外展開検討チーム」をつくり、地方公共団体の水道事業の海外展開に当たっての課題や必要な支援策等についての検討を行っています。世界の水問題の解決に貢献することは、我が国経済の成長にもつながります。
東京都水道局は、東京都が51%出資する東京水道サービス(株)を受け皿として海外の水道事業体からのコンサルティングや施設管理業務の受注を目指しています。ベトナムでは、ハノイに合弁会社を設立し、ハノイ市内の浄水場の整備・運営を行います。
 横浜市では、2010年に横浜市が100%出資する横浜ウォーター(株)が営業を開始しました。国内外の水道事業体へのビジネス展開を図る計画を打ち出しています。アジアからの海外研修員の受入や、ベトナム、サウジアラビアなどで水道事業のコンサルティング業務を受託しています。
2011年には、北九州市水道局がカンボジアの浄水場整備について2件のコンサルティング業務を受注して注目されています。1件目はJICAがODA案件として発注する浄水場設計に係る業務で、設計検証におけるアドバイザー業務を行います。2件目は浄水場の基本設計、実施設計、施工監理業務です。北九州市の受注額は約2700万円で建設工事は国際競争入札となる予定です。

浄水場に関する資格

 浄水場の設計は、上水道部門及び工業用水道部門の技術士やRCCMが行います。また、電気や機械の専門家も設計に関わったり、設備の運転やメンテナンスを行います。さらに化学の専門家が水質調査などを行います。
水道法により、水道事業者は、水道の管理について技術上の業務を担当させるため、水道技術管理者を置かなければならないこととなっています。水道技術管理者は、水道施設が施設基準に適合しているかどうかの検査、給水開始前の水質検査及び施設検査、定期及び臨時の水質検査、浄水場などの従事者の健康診断 塩素消毒などの衛生上の措置、給水の緊急停止、給水停止命令による給水停止 を行います。
水道施設の維持管理に関わる資格としては、水道浄水施設管理技士があります。

浄水場の課題

現在、日本には老朽化して更新期を迎える浄水場が多くあります。水道管の更新も含めて、改修・改築が大きな課題となっています。

【用語解説】
※オゾン処理
オゾン(O3)の強力な酸化力を用いて消毒、脱臭、脱色等を行うことです。オゾン処理は、無機塩濃度の増加や汚泥の発生がないこと、塩素処理のようにカルキ臭、塩素臭がなく有機塩素化合物類等の有害生成物も生じないこと、難分解性有機物の分解除去も可能である等の利点があます。

※生物活性炭処理
活性炭の吸着作用と共に活性炭層内に増殖した微生物によって有機物を分解することで、活性炭の吸着機能をより長く持続する方式です。

※RCCM(Registered Civil Engineering Consulting Manager)
建設コンサルティング業務の管理技術者・照査技術者になるための資格で、(社)建設コンサルタンツ協会が実施する民間資格です。技術士のもとで建設コンサルタント等の業務を行います。


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