今すぐできる環境対策【vol.1】その現場で守るのは生き物?近隣住民?現場で働く人?

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(8)今すぐできる環境対策【vol.1】その現場で守るのは生き物?近隣住民?現場で働く人?

作業着を着て微笑む男性工事施工に際しては、環境に少なからず影響を与える。
極力その負荷を減らすような施工方法を考えなければならない。
今回から3回に分けて、環境を守る仕事の進め方について考えてみよう。

 

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登場人物:
地場建設会社 昭平建設
・青木 建一 現場担当 25歳
・今野 真一 係長 30歳
・武上 幸一郎 工事課長 40歳
・岩下 厳五郎 工事部長 50歳
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3つの環境とは

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岩下「工事現場ではどうしても環境に影響を与えてしまいがちだ。しかしそれをできるだけ最小限にする必要がある」
今野「環境に影響を与えると工事中止となって会社にとっても悪影響がありますね」
岩下「環境には3つの種類があるけれど、わかるかい」

 

青木「まずは自然環境ですね。水、空気、土壌をきれいに保つことです。川や海の水質汚濁、大気汚染、土壌汚染をしてしまうと自然に影響があります」
今野「水、空気、土壌に加えて、地盤も自然環境だよ。建設工事では地下水をくみ上げることをありますが、その結果、地盤沈下が起きることがあります」
岩下「自然環境以外にはなんだろうか」

 

青木「周辺環境ですね。工事をしている周辺の方々に迷惑をかけることです。騒音や振動がそれにあたります。大きな機械が動くことがあるので、それに伴って音や、振動が発生してしまいます」
今野「騒音、振動に加えて、粉塵被害もありますね。道路をダンプカーが走ったり、掘削工事などをすると土砂の粉塵が巻き上がって洗濯物を汚したりします」
青木「悪臭もいやですね。臭いと気分が悪くなるし、最悪病気になったりします」

 

岩下「3つ目の環境は何だろう」
青木「うーん、ちょっとわからないです」
今野「職場環境ですね。自然環境が自然の生き物、周辺環境が近隣住民を対象としているのに対して、職場環境とは工事現場で働く人たちの環境です」
青木「なるほど、現場で働く人を守ることも大切ですね。でもそれは安全管理ではないのですか」
今野「安全管理は、けがをしたり病気にならないようにすることだ。職場環境とは、より働きやすい環境を作ることで、作業者の士気が上がり、作業の効率が上がるという効果があるよ」

 

青木「つまり現場で行うべき環境管理とは、自然環境、周辺環境、職場環境の3つがあるということですね。」
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どの環境を守らないといけないのか

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手のひらに苗木_環境青木「自然環境、周辺環境、職場環境の3つの環境があることはよくわかりました。
このうち、どの環境がもっとも重要なのですか」

 

武上「3つとも重要だけれど、優先順位は現場の立地条件や、工事内容によって異なるよ」
青木「どのように違うのですか」
武上「例えば山中で行う工事で、近くに河川があり、貴重動植物がいれば水質や大気や土壌など自然環境を守ることがもっとも重要だ。
一方、都市部の工事で、周辺に学校や民家がたくさんあれば、騒音や振動などの周辺環境が重要になる。
また工期が短く突貫工事であれば夜遅くまで、また休日なく工事を進めなければならない。そのような場合は職場環境に配慮して、そこで働く人の環境を守ることが重要だ。」

 

青木「なるほど、工事現場ごと配慮しなければならない環境の種類が異なるのですね。生き物を守るのか、近隣住民を守るのか、働く人を守るのか、ですね。」
武上「工事が始まる前に、工事による影響を調べることを環境影響評価という。英語で言うと環境アセスメントだ。」
今野「事前にどのように環境に影響があるのかを調査して、汚染しないような工事の方法を考えておくのですね」

 

武上「そのとおりだ。ひとたび環境が悪化すると後戻りできない
水や空気や土が汚れれば、もとのきれいな状態に戻すには何十年もかかるといわれている。また騒音や振動で近隣に住む人の体調が悪くなったり、心証を害するとなかなか元に戻らない。現場で働く人が過労で精神疾患などになると大変なことだね」
青木「よくわかりました。十分に気を付けて工事を進めようと思います」
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上乗せ条例、横出し条例?

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武上「環境を守るには、法律を理解することが重要だよ」
青木「どんな法律があるのですか」

 

武上「自然環境では、水質汚濁防止法、大気汚染防止法、土壌汚染防止法、周辺環境では、騒音規制法、振動規制法、悪臭防止法、職場環境では労働基準法、労働者派遣法などがあるぞ。
特に建設業の場合、自然や周辺や職場の環境に与える影響が、その他の業種に比べて大きいので、厳しい規制が設けられている法律もある。
しっかり読み込んで後戻りできない環境を守るような施工をしよう」

 

青木「日本全国、同じ法律なのですか。先ほど話されたように地域によって環境の重要度が異なるように思うのですが」
武上「いいところに気づいたね。青木君がいうように、地域によって守らなければならない環境の基準が異なるよ。例えば閑静な住宅街では騒音は小さくしなければならないけれど、工場地帯では少々の騒音は問題にならないだろう。この問題を解決するために、「条例」がある」

 

青木「条例ってなんですか」
武上「地方公共団体ごとに、法律の基準値を厳しくしたり、別の項目を規制したりしている。
規制を法律より厳しくすることを『上乗せ規制』、法律とは別の項目まで広げて規制することを『横だし規制』という。
工事が始まる前に、法律を調べることは当然のこととして都道府県や市町村の上乗せ規制や横出し規制を調査したうえで施工することが重要だ」

 

青木「上乗せ、横出しっておもしろい言葉ですが、わかりやすいですね。しっかり調べたうえで施工します」
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工事を始める前に、自然、周辺、職場の環境にどのような影響を与えるかを十分に調査することは重要なことだ。
一度汚染したら何十年も元に戻らないことを肝に銘じて、しっかりとした対策をうたなければならない。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。