今すぐできる工期短縮【vol.3】「仕事ができる人は春のきざしを数値で読む」

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春の気配いくら完璧な工程を作成しても遅れてしまうことがあるだろう。そんな時でも、最終工期は間に合わせないといけない。
そのためには、工期が遅れかけている前兆を早めにつかむことが重要だ。

 

今回は、中間チェックすることで工期を守るポイント4「マイルストーンで改善せよ」、工事が終わったら次の工事に活かすためにポイント5「来た道を振り返れ」を考えてみよう。

 

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登場人物:
地場建設会社 昭平建設
・青木 建一 現場担当 25歳
・今野 真一 係長 30歳
・武上 幸一郎 工事課長 40歳
・岩下 厳五郎 工事部長 50歳
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春の訪れをいかに気づくか

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岩下「工程表どおりに工事が進んでいるうちはいいが、いったん遅れ始めたときはどうすればいいだろう?」
武上「遅れ始めていることに早期に気づき手を打つことが重要です。例えば今野君や青木君は、春が近づいていることをどのようにして気づくかい?」
今野「気温が上がったり、桜のつぼみが膨らむと春だなあ、と感じます」
青木「僕は女性の服装が華やかになってきたら春を感じます」

 

武上「一般の人だとそれでもいいのだけれど、例えば花見客相手に飲食店をしていたり、春物衣料を販売する仕事をしている場合は、そんな判断ではダメだな」
今野「気づくのが遅いと言うことですね」
武上「そうだ。つぼみや服装が変わってから準備するようでは対応が遅くなるね。例えば日照時間や気温を観測して、例年との比較をし、今年の春の到来は早いのか遅いのか、暖かい春なのか、寒い春なのかを予想するんだ」
今野「なるほど、数値を観て春の兆しを予知するのですね」

 

武上「工程管理でいうと、実際に工期が遅れだしてから『遅れている』と言っても遅いということだ」
青木「では何を見ていればいいのですか」
武上「例えば基礎杭40本打設する工事があったとしよう。1本あたり60分の計画をしていたとすると、40本×60分=2400分=40時間となる。1日7時間作業するとすれば、40時間÷7時間=6日間ということになる。ところが実際に打設してみると、1本あたり80分かかることがわかった。すると、40本×80分=3200分=54時間、54時間÷7時間=9日となり3日間工期が遅延してしまう。工程が遅れだしてから慌てても遅い。そのため1本あたりの打設時間が分った段階で、基礎杭打設機械をもう1セット用意するなどの対策を打って、工期が遅れないようにしなければならない
青木「数値を見て早めに手を打つと言うことですね」

 

武上「工期が遅れているかどうかを測定することをKGI(キー・ゴール・インディケーター)といい、それを判断するための別の数値、上記の事例だと杭1本あたりの施工時間を測定することをKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)という。それぞれの工種で何がKPIかを知り、現場で常に計測しておくことが必要だ」
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工事まとめ5原則

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家を見て考える男性武上「さて工事が無事終わったとしよう。その後、何をやる必要があると思う?」
今野「工事のとりまとめですね」
武上「そうだ。では青木君、具体的に何をまとめたら良いと思う?」
青木「工期が予定どおりに行えたかどうか、ですか」
武上「それはもちろん大切だが、それだけでは不十分だ。次の5項目が重要だ。

 

1.本来の目的は達成できたか
2.スケジュールどおり進んだか
3.トラブル、リスクに対応できたか
4.他人の評価はどうか
5.今回の結果を次のプロジェクトにどのように活かせるか

 

それぞれについて、今野君、説明してくれるかい」

 

今野「『1.本来の目的は達成できたか』は、例えば学校建設の目的は新学期に学生を気持ちよく迎えることですし、住宅建設の目的は転校や転勤に合わせて新生活をスタートすることです。それに間に合わせることが重要です。『2.スケジュールどおり進んだか』は文字通り、当初立てた工程どおり進んだか。『3.トラブル、リスクに対応できたか』は例えば自然災害やクレームなどのために工程が遅れた場合、どのようにして挽回したか、ということです」
青木「実際に台風や悪天候の時にどのようにして工期を守ったのかを聞きたいですね」

 

今野「さらに『4.他人の評価はどうか』は、発注者はもとより、協力会社から評価されているかも重要です。協力会社に無理な工程を押しつけるケースがありますが、それでは良い関係が長続きしません。『5.今回の結果を次のプロジェクトにどのように活かせるか』では今回上手くいったことや上手くいかなかったことを次の工事に活かすための方法を考えておくということです」

 

青木「僕は経験が浅いので、上手くいったこと、いかなかったことを聞かせていただけるのは参考になります」
今野「この5つを工事反省会で発表してみんなで勉強をするといいな」
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工期が遅れているかどうかだけでなく、KPIと呼ばれる中間進捗がわかる数値をしっかり測定して早めに異常に気づくことが重要だ。また、工事が終わってからも5つの観点からデータをまとめておくことで会社の財産になる。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。