現場代理人の育成手法【vol.2】育成なくして指導なし

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(2)現場代理人の育成手法【vol.2】育成なくして指導なし

現場代理人によって、建設工事の成果は大きく異なる。

成果を出す現場代理人の育成方法について、「育成」と「指導」という観点から考えてみよう。

今回のテーマは「育成なくして指導なし」だ。

 

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登場人物:

地場建設会社 昭平建設

・青木 建一 現場担当 25歳

・今野 真一 係長 30歳

・武上 幸一郎 課長 40歳

・岩下 厳五郎 部長 50歳

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育成なくして指導なし

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岩下部長は、入社8年目の今野真一を見て、知識も経験もある程度のことは身につけたように感じている。

しかし気になることがある。

新入社員のころと比べて、熱意や、やる気が下がっているように感じるのだ。

 

そこで岩下部長は今野真一を呼んで話をした。

 

「今野君、最近挨拶の声が小さくなったように感じるけど」

「はい、実はちょっと仕事がマンネリ化していて、以前のようなやる気が出てこないのです」

「それはやる気がでないから声が小さくなったのではなく、声が小さいからやる気が出ないと感じるんだぞ」

「えっ、そうなんですか」

「自分の声は自分の耳に一番先に入る。元気で大きな声を出すと、その声が自分の脳を刺激して、熱意があがるのだ」

「やる気がでてこないのは、僕の声の大きさに原因があったのですね」

「声だけじゃないぞ。動作も大切だ」

「動作というと、どういうことですか」

「朝のラジオ体操、一所懸命にやっているかい」

「最近、眠いときにはちょっと手抜きをしているかもしれません」

「キビキビした動作も脳に影響を与えるんだ。一所懸命にラジオ体操することで、やる気が上がる。当然、周囲の人にもよい影響を与えるぞ」

「声と動作ですね。意識してやってみます」

「さらに表情も大切だ。以前はもっと笑顔で話していたように感じていたけれど、最近笑顔が少ないぞ」

「意識をしていませんでしたが。。。」

「では意識をして笑顔にすることが大切だ。現場で職人さんに出会ったら、大きな声で手を上げて、笑顔で挨拶をしてごらん。きっと職人さんも笑顔で挨拶してくれるぞ」

「わかりました。今日からやってみます」

 

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現場代理人の熱意や、やる気をあげることを「育成」といい、知識や経験を身につけさせることを「指導」という。

 

例えていうと、「育成」とはコップを上に向けること、「指導」とはそのコップに水を入れることだ。

コップが下を向いているときに、いくら水を注いでも水はコップにははいらない。つまり、熱意や、やる気がない人に、知識や経験を身につけさせようとしても、けっして身につかない。

 

まず「育成」をして、コップが上を向いたことを確認して、その後「指導」をすることが必要だ

「育成なくして指導なし」なのである。

 

スズメの学校とメダカの学校

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岩下部長は今野真一と話した後、今野の上司である武上課長を呼んだ。

 

「今野君から以前ほどのやる気や熱意を感じないが、何か心当たることはないか」

「はい、私もそう感じていました。しかし、私は知識を教えることはできるのですが、どのようにしてやる気を出させれば良いのかがわからないまま今日になってしまいました」

「知識を教えることを「指導」という。指導するということは、教えたり、理解させるのではなく、部下が自ら考えさせて、自主的に発言、行動し、反省するような環境を作るということだ。そうすることで知識だけでなくやる気も上げることができるぞ」

「なるほど、これまで一方的に教えるだけでした。」

「それではダメだ。ノウハウとはどのように仕事をすればよいのかを知ること。それに対してノウホワイとはなぜなのかを知ることだ。ノウハウを伝えるだけではダメで、ノウホワイを伝えることが今野の成長につながるぞ」

「ノウホワイって何ですか」

「例えば、労働安全衛生法では高さ2m以上を高所といい、安全帯などの落下防止処置が必要だ。これを教えることはノウハウを伝えること。それに対して、なぜ2m以上が高所なのかを考えさせることがノウホワイだ。」

「教えるだけでなく、意味も伝えるのですね」

「そうだ。2mというと身長よりも高いため、頭から落ちる危険性が高く、落ちれば重症や死にいたることもある。だから法律では2m以上を高所と定義している。と伝えるとノウホワイを知ることができる」

「なるほど、意味がわかるとやる気になりますね」

意味を感じて自主的に動くことを「感動」というのに対して、理解させられて他律的に動くことを「理動」という。「理動」では人は成長しない。いかにして「感動」させて成長させるかが、指導の要点だ。」

 

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「すずめの学校」という歌がある。「すずめの学校の先生は、ムチを振り振りチイパッパ」という上意下達の学校である。

これに対して「めだかの学校」は次のようだ。「だれが生徒か先生か、みんなで元気に遊んでる」という自由な雰囲気の学校である。

 

企業全体が「めだかの学校」になれば、社員は自主的に育ち活気にあふれた会社になるだろう。

現場代理人によって、建設工事の成果は大きく異なる。
成果を出す現場代理人の育成方法について、「育成」と「指導」という観点から考えてみよう。
今回のテーマは「育成なくして指導なし」だ。
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登場人物:
地場建設会社 昭平建設
・青木 建一 現場担当 25歳
・今野 真一 係長 30歳
・武上 幸一郎 課長 40歳
・岩下 厳五郎 部長 50歳
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育成なくして指導なし
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岩下部長は、入社8年目の今野真一を見て、知識も経験もある程度のことは身につけたように感じている。
しかし気になることがある。
新入社員のころと比べて、熱意や、やる気が下がっているように感じるのだ。
そこで岩下部長は今野真一を呼んで話をした。
「今野君、最近挨拶の声が小さくなったように感じるけど」
「はい、実はちょっと仕事がマンネリ化していて、以前のようなやる気が出てこないのです」
「それはやる気がでないから声が小さくなったのではなく、声が小さいからやる気が出ないと感じるんだぞ」
「えっ、そうなんですか」
「自分の声は自分の耳に一番先に入る。元気で大きな声を出すと、その声が自分の脳を刺激して、熱意があがるのだ」
「やる気がでてこないのは、僕の声の大きさに原因があったのですね」
「声だけじゃないぞ。動作も大切だ」
「動作というと、どういうことですか」
「朝のラジオ体操、一所懸命にやっているかい」
「最近、眠いときにはちょっと手抜きをしているかもしれません」
「キビキビした動作も脳に影響を与えるんだ。一所懸命にラジオ体操することで、やる気が上がる。当然、周囲の人にもよい影響を与えるぞ」
「声と動作ですね。意識してやってみます」
「さらに表情も大切だ。以前はもっと笑顔で話していたように感じていたけれど、最近笑顔が少ないぞ」
「意識をしていませんでしたが。。。」
「では意識をして笑顔にすることが大切だ。現場で職人さんに出会ったら、大きな声で手を上げて、笑顔で挨拶をしてごらん。きっと職人さんも笑顔で挨拶してくれるぞ」
「わかりました。今日からやってみます」
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現場代理人の熱意や、やる気をあげることを「育成」といい、知識や経験を身につけさせることを「指導」という。
例えていうと、「育成」とはコップを上に向けること、「指導」とはそのコップに水を入れることだ。
コップが下を向いているときに、いくら水を注いでも水はコップにははいらない。つまり、熱意や、やる気がない人に、知識や経験を身につけさせようとしても、けっして身につかない。
まず「育成」をして、コップが上を向いたことを確認して、その後「指導」をすることが必要だ。
「育成なくして指導なし」なのである。
スズメの学校とメダカの学校
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岩下部長は今野真一と話した後、今野の上司である武上課長を呼んだ。
「今野君から以前ほどのやる気や熱意を感じないが、何か心当たることはないか」
「はい、私もそう感じていました。しかし、私は知識を教えることはできるのですが、どのようにしてやる気を出させれば良いのかがわからないまま今日になってしまいました」
「知識を教えることを「指導」という。指導するということは、教えたり、理解させるのではなく、部下が自ら考えさせて、自主的に発言、行動し、反省するような環境を作るということだ。そうすることで知識だけでなくやる気も上げることができるぞ」
「なるほど、これまで一方的に教えるだけでした。」
「それではダメだ。ノウハウとはどのように仕事をすればよいのかを知ること。それに対してノウホワイとはなぜなのかを知ることだ。ノウハウを伝えるだけではダメで、ノウホワイを伝えることが今野の成長につながるぞ」
「ノウホワイって何ですか」
「例えば、労働安全衛生法では高さ2m以上を高所といい、安全帯などの落下防止処置が必要だ。これを教えることはノウハウを伝えること。それに対して、なぜ2m以上が高所なのかを考えさせることをノウホワイだ。」
「教えるだけでなく、意味も伝えるのですね」
「そうだ。2mというと身長よりも高いため、頭から落ちる危険性が高く、落ちれば重症や死にいたることもある。だから法律では2m以上を高所と定義している。と伝えるとノウホワイを知ることができる」
「なるほど、意味がわかるとやる気になりますね」
「意味を感じて自主的に動くことを「感動」というのに対して、理解させられて他律的に動くことを「理動」という。「理動」では人は成長しない。いかにして「感動」させて成長させるかが、指導の要点だ。」
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「すずめの学校」という歌がある。「すずめの学校の先生は、ムチを振り振りチイパッパ」という上意下達の学校である。これに対して「めだかの学校」は次のようだ。「だれが生徒か先生か、みんなで元気に遊んでる」という自由な雰囲気の学校である。企業全体が「めだかの学校」になれば、社員は自主的に育ち活気にあふれた会社になるだろう。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。