建設会社 若手技術社員の育成手法 【vol.3】感動を与える

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(1)若手技術社員の育成手法 【vol.3】感動を与える

建設会社の若手技術者がなかなか育たないという。また早期に退社してしまう者も多い。

 

ここではいかにして、若手社員のやる気を上げるかについて考えてみよう。3回目となる今回のテーマは「いかにしてほめて育てるか」だ。

 

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登場人物:
地場建設会社 昭平建設
・青木 建一 現場担当 25歳
・今野 真一 係長 30歳
・岩下 厳五郎 部長 50歳
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小さな課題を設定し、できたらほめる

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青木建一は、入社して間もないころを思い出していた。
新入生の仕事は、測量が多い。トランシット(角度を測定する測量器具)やレベル(高さを測定する測量器具)を据え付けることが主たる業務だ。
当時の担当上司は今野真一だ。今野は建一にこういった。

 

「トランシットを据えるのに、何分かかる?」

「えーっと、10分くらいかかりそうです」

 

と答えると、今井はこういった。

 

「よしでは、3分に挑戦しよう」
「えっ」

 

建一は驚いた。

これまでの最高タイムは5分。しかも今回はトランシットを据える地面が斜めになっている。

 

「君ならやれる。がんばろう」

 

建一はどうせ無理、と思いながら、いやいややり始めた。すると大工さんがとおりすがりに、

 

「青木君、3分にチャレンジしているんだって。きみならやれるぞ」

 

次は左官屋さんが

 

「青木君は手つきがいいなあ。その調子だと3分以内でできそうだな」

 

などと声をかけてくれる。建一はうれしくなってがんばった。

 

「できました!」

 

時計を見ると2分50秒だった。

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ほめて育てる、とはよく言うことだ。しかし新入生や若手社員にはほめる機会がなかなか訪れないものだ。
そこで、小さな課題を設定するのがよい。
その課題は分単位でできるのもがよく、長くても数時間でできるような内容がよいだろう。

 

そうすると毎日のようにほめる機会があり、そのことで小さな自信を積み重ねることができる

できるかできないか50:50の目標を立てる

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建一は最近、小規模工事を任せられるようになった。工程表を書き、岩下部長と打合せをする。そうすると岩下部長は建一にいう。

 

部長「100日かかるって?ちょっと長すぎるな。俺なら50日くらいでできると思うけど、どう?やってみない?」

 

建一「ちょっと待ってください。100日でも十分厳しいし、50日なんてとんでもない。掘削中に水が出るかもしれないし、雨も考えられます。おまけに、工事の最中に必ずといってよいほど、社長から突然、別の現場に行けっていう指示が来て、いつも「大至急だ」っていわれますよ」

 

部長「そうだな。50日は厳しいかもな。でも、もしも水も出ず、雨も降らず、社長からの突然の指示もなくその作業だけに集中できたらどうだ?」
建一「そんなことは現実的じゃないけど、それなら20日くらいは詰めて、80日でできるかもしれません。」

 

部長「80日ね。では、例えばの話だが、工程に対してその50%の保険で守られるのならどうだろう。」

 

建一「保険ってなんですか?」

 

部長「その分遅れてもおとがめなしということだ。80日工程の場合、保険はその半分の40日つける。すると全体で120日で終わればいい工期となる。」

 

建一「100日の工程を80日にチャレンジするが、40日の保険があり、合計120日でやるっていうことですか?それなら問題なくできます。」

 

部長「100日工期に対して120日なら誰でもできるね?もっとつめられないか?」

 

建一「じゃあ・・・・・・、70日ではどうですか?」

 

部長「70日ってことは、保険は半分の35日だ。全部の工期は105日になる。するとチャレンジ70日、保険35日の工程となる。まだ105日で元の工期より多いな。じゃあたとえば50日間、この仕事だけに集中してくれないか。ほかは一切手をつけないで、段取りも俺が教える。実際に問題があったら、本当に保険の25日までは俺が面倒見るよ」

 

建一「本当に面倒を見てくれるんですね。なら50日でチャレンジしてみます。これなら、合計で75日までは遅れてもおとがめなしですね?」

 

部長「その通り。50日のチャレンジの工期、25日の保険で今回の工事はやってみよう。」

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小さな課題を設定し、できたらほめることを繰り返そうと前項で書いた。

一方で、できるか、できないか50:50の目標を設定することも重要だ。
負荷のかかる目標を設定し、それをやり切ることで達成感を感じることができる。そうすると「自分で自分をほめたい」という感覚になるものだ。

社会貢献すると世間から認められる

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建一は会社の方針で、毎日朝工事現場周辺の道路を掃除している。また毎週1回、近くの公園のゴミ拾いや草抜きをする。
そうすると地元の方々からよく声をかけられる。

 

「監督さん、いつも掃除してくれてありがとうございます。」
「工事がはじまってから、公園がきれいになったって子ども達がよろこんでいるわ」

 

現場を運営する一方で毎日掃除することは大変だが、地元の方々からこのような声がけをされると正直うれしい。

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近隣への貢献活動として道路や公園の掃除をしたり、地元の資源回収の手伝いなどをすることで地元の方々から認められるとうれしいものだ。
自らの存在価値を感じることもできる。無理のない範囲で、地元貢献、社会貢献活動をすることで、若手社員のやる気を増すことができる。

降籏 達生 ふるはた たつお

建設技術コンサルタント。ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役。
ハタ コンサルタント株式会社 http://www.hata-web.com/
映画「黒部の太陽」に憧れて熊谷組に入社。ダム工事、トンネル工事、橋梁工事などの大型土木工事に参画。阪神淡路大震災を契機に技術コンサルタント業をはじめる。
建設技術者4万人の研修・育成、1,000件を超える現場指導を手がけ、建設業界からの信頼が厚い。
編集長をつとめるメールマガジン「がんばれ建設~建設業業績アップの秘訣~(http://www.hata-web.com/mail_magazine.html)」は、読者数12,000人を誇る、日本一の建設業向けメルマガとなっている。